プロンプトエンジニアリングとプロンプトの基本公式
プロンプトエンジニアリングとは、大規模言語モデル(ChatGPTや他のAIモデルなど)に対して、意図した回答・出力を得るための「指示(プロンプト)」を設計・最適化する技術・手法のことです。
- 背景
- 大規模言語モデルは膨大なデータを学習しており、さまざまな文脈に対応した回答を生成できる。
- しかし、利用者が何を望んでいるかを適切に伝えなければ、求める回答と異なる出力が返ってくる可能性がある。
- 目的
- 適切な形で質問・要望を行い、回答のブレを抑えつつ、より正確かつ詳細な情報を得る
- メリット
- 答えが得られやすくなる
- 時間の節約になる
プロンプトの基本公式
意図した回答・出力を得るために、「プロンプトの基本公式」(のようなもの)として次のような考え方があります。各要素をしっかり使い分けることで、AIモデルへの指示が明確になり、より精度の高い回答を得やすくなります。
役割(Role)
+ 目的/目標(Goal)
+ 条件(Constraints)
+ 入力(Input)
+ アウトプット形式(Output Format)
= 最適なプロンプト
ここでは便宜上、以下のように整理します。
Role(役割)
役割の意義
- AIに“どう振る舞ってほしいか”を明確にするのが目的。
- AIモデルはさまざまな分野の知識を備えていますが、何の専門家/何のキャラクターとして振る舞うかを指定することで、回答の文体や専門性を大きく変えられる。
実際の指定例
- 「あなたは優秀なソフトウェアエンジニアです」
- 「あなたは熟練の会計士です」
- 「あなたは小説家のように創造的な文章を書きます」
ポイント
- 指定する役割は一つだけでもよいが、複数の要素を組み合わせてもよい。
- 例:「あなたは優れたデータサイエンティストであり、プレゼン技術の指導者でもあります」
- 役割の指定は、回答の語彙・口調・専門性・視点に大きく影響する。
Goal(目的/目標)
目的の意義
- 「そのプロンプトを通じて何を達成したいか」を明確にする。
- AIがどの方向に回答を導くかの大枠となる。
- ゴールが曖昧だとAIの推測に依存する部分が大きくなり、求める情報が得られないことが多い。
ゴールの具体例
- 「新規事業を立ち上げるためのステップを把握したい」
- 「論文執筆に必要な文献リストを作成したい」
- 「売上を上げるための具体的なマーケティング施策を取得したい」
ポイント
- 具体性を意識する(「◯◯の方法を知りたい」「問題解決のためのシナリオを複数提示してほしい」など)。
- ユーザー(依頼者)自身が何を最終的に得たいかを整理しておくと、プロンプトの精度が高まる。
Constraints(条件)
条件の意義
- 回答の範囲・スタイル・形式に対して、あらかじめ“縛り”を設定する。
- 大量の情報を得たい場合に絞り込みができ、逆に短い文章でまとめたい場合も指定が可能。
- AIの回答を最適化し、役立つ情報だけを抽出するために重要。
代表的な条件の例
- 文字数・行数
- 「箇条書きで5つにまとめてください」
- 「1項目50文字以内に収めてください」
- 言語・文体
- 「敬体(です・ます調)で書いてください」
- 「論文調で書いてください」
- 「ジョークを交えて親しみやすく説明してください」
- 専門性・技術レベル
- 「専門用語を極力省いて、中学生でも分かる言葉にしてください」
- 「研究者向けの専門用語を使い、詳細まで解説してください」
- 禁止事項・不要な要素
- 「差別的な表現は避けてください」
- 「政治的な意見は含めないでください」
ポイント
- 具体的かつ複数の条件を重ねると、よりカスタマイズされた回答が得られる。
- 条件が多過ぎるとAIが回答を見つけづらくなることもあるため、優先度の高い条件に絞るのがコツ。
Input(入力)
入力の意義
- AIに処理してほしいデータや追加情報・具体的背景を提示する。
- 文章、数値データ、質問集、設定資料、画像の説明など、あらゆる情報を入力として扱える。
入力の例
- 「以下のレジュメを要約してください」
- 「私が作成したこの事業計画書をレビューしてください。(要旨を貼り付ける)」
- 「以下の会話ログをもとに分析してください」
ポイント
- 必要な情報や背景をできるだけ具体的に与えることで、AIが誤解なく回答できる。
- 入力するデータが長い場合は、どの部分に焦点を当てるべきか明示すると、回答の精度が高まる。
Output Format(出力形式)
出力形式の意義
- AIモデルから得たい“回答の形”を指定する。
- 箇条書き、ステップバイステップ、表形式、構成見出し付き…など、伝え方は多岐にわたる。
出力形式の具体例
- 「箇条書きで出力してください」
- 「提案→理由→具体的事例 の順に出力してください」
- 「小説のような形式でストーリー仕立てにして回答してください」
- 「マークダウン形式でコードブロックに書いてください」
ポイント
- 「どう受け取りたいか」を明確にするほど、回答が再利用しやすくなる。
- フォーマットを指定しない場合、AIは自由形式で回答するため、求める形式と異なる可能性が高まる。
各要素を融合したプロンプト例
以下は、5つの要素を意識的に組み込んだサンプルです。
【Role】
あなたは経営コンサルタントの専門家です。【Goal】
私の会社のSNSマーケティング戦略を改善するための提案をいただきたいです。【Constraints】
- 予算は月20万円程度、ターゲットは20代女性とする
- 箇条書きで5つの提案をまとめる
- 提案内容は1つあたり80文字以内で簡潔に
【Input】
現在は主にInstagramを活用しているが、フォロワー増やエンゲージメント率が伸び悩んでいる。【Output Format】
- 提案A: …
- 提案B: …
- 提案C: …
- 提案D: …
- 提案E: …
まとめ
- Role(役割)
- AIがどの専門家・キャラクターとして回答すべきか
- Goal(目的/目標)
- 何を実現したいのか、どんな情報が必要なのか
- Constraints(条件)
- 文字数、文体、使用言語、禁止事項などの縛りを明示
- Input(入力)
- 問題となっている背景・参照資料・データを具体的に提供
- Output Format(出力形式)
- 箇条書き、論文形式、ステップ形式など、回答の「型」を指示
この5つの要素を明確に組み合わせることで、AIが誤解なく“何をどんな形で”答えればよいかを理解しやすくなり、結果としてより精度の高い回答が得られやすくなります。
これが「プロンプトエンジニアリング」を行う際の基本的なフレームワークであり、状況や目的に応じて各要素を追加・修正して活用してみてください。