プロンプトの基本公式詳説:「Input」

プロンプトの基本公式:今回は「Input」に注目しよう

前回までは「Role(役割)」「Goal(目的/目標)」「Constraints(条件)」といった要素を解説してきました。今回は、その次に位置する「Input(入力)」を掘り下げて解説します。
「Input」は、AIに対する情報提供の要となる部分です。プロンプトエンジニアリングにおいて、どのようにInputを扱うかによって、回答の品質や具体性が大きく変わります。


Input(入力)とは?

Inputとは、読んで字のごとく、AIに対して提供する情報のことを指します。これには大きく分けて以下のタイプがあります。

  1. テキスト情報
    • 例: 論文や記事の全文、設定資料、既存の会話ログ、顧客の声まとめ、など
  2. 数値データ
    • 例: 売上やアクセス数などの統計データ、センサーデータ、数値リストなど
  3. 構造化データ
    • 例: CSVやJSON形式のデータ、表形式のリストなど
  4. 説明・注釈
    • 例: 「この商品の特徴はAとBで…」といった背景説明や意図の補足情報

こうしたInputを、AIがどのように解釈しやすい形で提供するかがポイントになります。

なぜInputが重要なのか

AIの回答精度が上がる

AIは、大規模言語モデルとして膨大な知識を学習していますが、質問者が提供する最新情報や固有の情報がなければ、回答はどうしても一般論に偏りがちです。適切なInputがあれば、回答は具体的で的確なものになりやすいです。

文脈や背景を共有できる

プロジェクトの背景や目的をAIが十分に理解していなければ、期待する回答にはなりません。背景情報や目的をInputに含めることで、AIが「何が問題で、何を解決すべきか」を把握しやすくなります。

不要なやりとりを省略できる

Inputの内容が不足していると、追加で「◯◯についてもう少し詳しく教えてください」などのやりとりが必要になりがちです。最初の段階で十分な情報を渡しておくと、回数を重ねずスムーズに目的にたどり着けます。

Input指定のコツ

必要な要素を整理したうえで提供

「どの部分をAIに読んでほしいのか、要約してほしいのか」を明確にしておくと、回答がブレにくくなります。何をどう扱ってほしいかをまとめてから、Inputとして提示しましょう。

  • 例:
    1. 背景説明(業界状況や会社の情報など)
    2. 既存データ(売上推移や顧客アンケート結果など)
    3. 具体的な課題(新規プロダクトの市場調査が不十分 など)
分割や要約を活用

AIに長大な資料を丸ごと読み込ませたい場合は、セクションごとに区切り、ポイントごとに要約を入れると読みやすくなります。また、テキストの分割数やまとめ方を明示しておくと、AIがどの程度の粒度で回答を組み立てればいいのかを把握しやすくなります。

【Input】
≪資料1: 製品仕様書≫
- Part1:概要
- Part2:機能一覧
- Part3:既存顧客の意見

≪資料2: 売上データ≫
- 過去2年間の推移(CSV形式に要約)

... など
重要なキーワード・用語をピックアップ

業界固有の用語やプロジェクト特有の略称などは、定義や意味を補足してあげるとAIが誤解しにくくなります。逆に、曖昧な用語や省略が多いと、回答に齟齬が出る原因になりがちです。

Inputと他の要素との連動

Roleとの組み合わせ
  • Role: 「あなたはデータ分析の専門家です」
  • Input: 「以下の売上データを読み込み、主要因を推定してください。データは月次ベースで…」

この場合、Roleが「データ分析の専門家」なので、Inputとして渡される数値データに対して分析的な視点で答えてくれやすくなります。

Goal・Constraintsとの組み合わせ
  • Goal: 「製品改善のアイデアを得たい」
  • Constraints: 「1つのアイデアにつき100文字以内で5つに絞る」
  • Input: 「過去の顧客アンケートまとめ・売上推移表」

Goalが「製品改善」で、Constraintsにより「100文字以内で5つ」と提案内容を限定しているので、AIはInputのデータを踏まえてコンパクトにアイデアを返してくれやすくなります。

Output Formatとの相性
  • Output Format: 「以下の形式で回答して:
      1. アイデア概要
      2. 根拠
      3. 期待される効果」
  • Input: 「アンケートデータ・ユーザーのフィードバック集」

Output Formatが具体的に決まっていれば、InputをAIがどう処理し、どんな形でアウトプットすればいいかも分かりやすくなります。特に表形式や箇条書きなどを要求する場合、Inputのデータをどのように分解すればよいかが明確になるのは大きなメリットです。

Inputをうまく使うための注意点

  1. 情報過多を避ける
    • あまりにも膨大かつ未整理の情報を一度に投げ込むと、AIの回答が散漫になったり、処理時間が長くなったりします。
    • 必要に応じて段階的に情報を追加するか、要点をまとめると効果的です。
  2. 更新や差分の提示
    • 対話が続く中で新たな資料やデータが出てきた場合、その差分を明確に示してあげるとよいです。
    • 例:「前回のInputに加えて、以下のデータが新たに手に入りました。◯◯部分を更新して分析してください」
  3. 機密情報の扱いに注意
    • 実際の業務データや個人情報を扱う場合は注意が必要です。AIに機密情報を入力する場合、やり取りの管理や利用規約をしっかり確認しましょう。

まとめ

  • Input(入力)とは、AIに処理してほしいデータや資料、背景情報などを指し、プロンプトの基本公式の重要な要素。
  • Inputを丁寧にまとめ、必要な文脈や用語定義を付与することで、AIの回答精度が大きく向上する。
  • Role・Goal・Constraints・Output Formatと組み合わせて使うことで、回答の方向性やスタイルを整合させられる。
  • 反復的に質問・修正を繰り返す場合は、Inputを段階的に追加したり差分を提示する工夫が効果的。

次回は「Output Format(出力形式)」の部分を掘り下げ、どのように回答の形を指定すると使いやすくなるのかを解説していきます。Inputで提供されたデータをどう整理した形で回答してもらうかがわかると、プロンプトエンジニアリングの完成度がさらに高まるはずです。

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