チェーンプロンプトとその活用方法
チェーンプロンプトとは
基本的な概念と仕組み
チェーンプロンプトとは、複数のプロンプト(質問や指示)を連動させて一連のタスクを自動化する手法です。単一のプロンプトでは対応しきれない複雑な処理や段階的な問題解決を、段階的・体系的に進められるという特徴があります。
- 仕組み
- あるプロンプトが実行されて結果を出す
- 結果が次のプロンプトに入力(使用)される
- 最終的に複数のプロンプトを連鎖させ、より精度の高い結果を得る
- 利点
- 作業手順の標準化・自動化
- 情報漏れや重複の削減
- 複雑な処理を段階的に整理
シングルプロンプトとの違い
項目 | シングルプロンプト | チェーンプロンプト |
---|---|---|
対応できる処理範囲 | 一問一答の、単純な問い合わせや対話 | 複雑なワークフローや条件分岐 |
柔軟性 | 限定的 | 段階的処理や複雑なフローに適応可能 |
管理性 | 管理は容易だが拡張性は低い | 各プロンプトの役割分担によりメンテしやすい |
- シングルプロンプト:一度のやり取りで回答が完結するようなケースで有効
- チェーンプロンプト:段階的に情報を収集・処理し、最終的に大きな成果物を得るような場面で威力を発揮
チェーンプロンプトの種類
- ステートフルチェーン
- ステートレスチェーン
ステートフルチェーン
ステートフルチェーンは、プロンプトが内部状態(履歴や中間結果)を保持しながら進行する手法です。一連の対話の中で前のステップが保持した情報を継続的に利用します。1つのプロンプトウィンドウを開いて、その中で何度も対話を繰り返す使用法がこれに当たります。
- 例:対話型でエラーの原因を特定し、解決策を提示するまでを一回のやり取りの中で完結するデバッグプロンプトなど
- メリット:対話の文脈を保持できるため、多くの追加情報をその場でやり取りしやすい
- デメリット:対話が長くなると状態管理が複雑になり、リソースが増大する可能性がある
この方法は、後工程のプロンプトへのデータ受け渡しが簡単です。しかし、途中のプロンプトの回答が思惑とずれた場合、修正がとても大変になります。思惑とずれる原因は、ほとんどが「生成AIはこれまでの回答内容も加味して今回の回答を出す」からです。個人的目安ですが、3~4回程度の対話で終わるようなチェーンに採用するとよいでしょう。
ステートレスチェーン
ステートレスチェーンは、各プロンプトが独立して動作し、必要に応じてデータだけを受け渡す手法です。履歴や状態を常に保持せず、都度入力を受け取って処理を行います。APIキーを使ってプロンプトの結果を連鎖させるパターンがよく紹介されています。

- 例:
- データ収集用プロンプト
- 分析用プロンプト
- レポート生成用プロンプト
上記の3つを順番に呼び出し、結果を都度次に渡す。
- メリット:スケーラビリティが高く、柔軟にプロンプトを差し替え可能
- デメリット:データ受け渡しや連携が煩雑になる場合があり、管理が難しい
この方法は、後工程のプロンプトへのデータ受け渡し方法に工夫が必要です。また、データ形式によってはAIのモデルが対応していない場合があります(ChatGPT 4oとo1でも対応状況が異なる)。しかし、途中のプロンプトの回答が思惑とずれた場合、ずれた結果を生んだプロンプト内容を修正して再実行すればよいため、軌道修正が簡単です。
この方法の最大のメリットは、都度新規プロンプトで実行することによる「生成AIがこれまでの回答内容を加味しない回答を出すこと」でしょう。先入観なしの、単純にタスクを遂行した結果を出してくれるからです。そのため、思惑とずれた回答が出てきた場合は、その実行指示に使用したプロンプトの質が悪い場合がほとんどです。また、チェーン内で同じ生成AIを使い続けるのではなく、ケースバイケースで別の生成AIを使用するチェーン設計にするとよいでしょう。
チェーンプロンプトの活用場面
ステップバイステップでの問題解決
活用シナリオ
- 障害対応(ステートフルチェーン想定)
- 障害エラーコード検知 → 原因分析 → 対策の提示
- サーバーダウン検知 → 状態確認 → 再起動手順の提示
データの収集と分析
活用シナリオ
- サーバーリソース最適化(ステートレスチェーン想定)
- メトリクス収集→収集したデータの解析→最適化余地の判定→提案レポート生成
- サーバー稼働状況報告(ステートレスチェーン想定)
- メトリクス収集→収集したデータの解析→傾向から将来値予測→リソース増強時期の判定→稼働状況レポート生成
- PoC検証報告資料作成(ステートレスチェーン想定)
- 比較対象製品の概要を収集→メリット・デメリット整理→目的に対する評価付け→PoC検証項目生成→PoC実施(ここは実働)→結果の整理→PoC検証結果レポート生成
- 製品導入の費用説明資料作成(ステートレスチェーン想定)
- 導入したい背景の草案作成→類似製品との優位性情報収集→導入効果の草案作成
ブレイクダウン・ブレインストーミング
活用シナリオ
- WBS作成(ステートレスチェーン想定)
- プロジェクト目的に対するタスク大項目洗いだし→タスク大項目の詳細洗いだし→優先順位決め
- なぜなぜ分析(ステートフルチェーン想定)
- 相談投稿して、真因分析してもらう
チェーンプロンプトの設計方法
タスクの分解
大規模タスクを小さなステップに分割し、各ステップがどのような入力を必要とし、どのような成果物を出力するかを明確にします。
- 手順
- 目的の定義
- 必要なサブタスクの洗い出し
- 各サブタスクの依存関係を図示
各プロンプトの役割
- データ収集プロンプト:必要なデータを集める
- データ分析プロンプト:集めたデータを分析する
- データ整形プロンプト:分析したデータを加工する
- 結果提示プロンプト:最終的な結果を分かりやすい形で提示する
プロンプト間のデータの受け渡し
- データ形式の統一(例:JSON)
- API活用:REST APIやGraphQLなどを用いてシステム間のデータを連携
- 結果をファイルに書き出し、次ステップのプロンプトに添付
チェーンの標準化
- テンプレートの作成:どのプロンプトでも同様のフォーマット・流れを踏襲(要するに金太郎飴です)
- 命名規則の統一:プロンプト名やデータフィールド名など
- ドキュメント整備:すぐに参照できるドキュメントを用意し、プロジェクト横断での再利用性を高める
標準化されたチェーンは、同じパターンを繰り返し使用できるテンプレート(金太郎飴)のような役割を果たします。これにより、毎回新しいプロンプトやステップを設計する必要がなくなり、作業時間を大幅に削減できます。チェーン冒頭の変数を入れ換えるだけで使い回せる水準まで標準化できれば、後がとても楽になります。