AlmaLinux 10 総合ガイド 第1章: AlmaLinux 10への第一歩

AlmaLinux 10 総合ガイド
第1章: AlmaLinux 10への第一歩

【この章で学ぶこと】 AlmaLinuxの基礎知識とVPS環境の構築
【なぜ重要か】 正しい環境構築が学習の成功を左右する
【前提知識】 基本的なPC操作ができること
【所要時間】 約1〜2時間

この章では、AlmaLinux 10を学ぶための第一歩として、AlmaLinuxとは何か、なぜ学ぶべきなのかを理解し、実際にVPS(仮想専用サーバー)環境を構築するところまでを解説します。「Linuxは難しそう」という印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、心配は無用です。本ガイドでは、シンVPSを使用することで、実務に近い環境でありながら、OSの再インストールも簡単に行えます。

1.1 AlmaLinuxとは何か

1.1.1 Linuxディストリビューションの全体像

Linuxとは、WindowsやmacOSと同じくコンピュータを動かすための基本ソフトウェア(オペレーティングシステム、略してOS)です。ただし、Linuxには大きな特徴があります。それは「オープンソース」であること、つまりソフトウェアの設計図(ソースコード)が公開されており、誰でも自由に利用・改変・配布できるという点です。

この自由さから、Linuxをベースにしたさまざまな派生版が生まれました。これらをディストリビューション(略してディストロ)と呼びます。Ubuntu、Fedora、Debian、そしてAlmaLinuxなど、世界には数百種類のディストリビューションが存在します。

ディストリビューションは、それぞれ異なる特徴や用途を持っています。

  • Ubuntu: 初心者向けのデスクトップ用途で人気
  • Fedora: 最新技術を積極的に取り入れる先進的なディストリビューション
  • Debian: 安定性を重視、多くのディストリビューションの基盤
  • AlmaLinux: エンタープライズ(企業向け)サーバー用途に最適化

1.1.2 RHEL系ディストリビューションの系譜

RHEL(Red Hat Enterprise Linux、レッドハット・エンタープライズ・リナックス)は、Red Hat社が開発・販売する商用Linuxディストリビューションです。企業向けに長期サポートと安定性を提供し、世界中の企業サーバーやクラウド環境で広く使用されています。

RHELは有償製品ですが、そのソースコードはオープンソースライセンスに基づいて公開されています。このソースコードを基に、商標やサポート契約なしで再構築したディストリビューションが「RHEL互換ディストリビューション」です。AlmaLinuxはこのカテゴリに属します。

RHEL互換ディストリビューションには以下のようなものがあります。

  • AlmaLinux: CloudLinux社が設立した非営利団体AlmaLinux OS Foundationが開発
  • Rocky Linux: CentOSの共同創設者Gregory Kurtzer氏が立ち上げ
  • Oracle Linux: Oracle社が提供する企業向けディストリビューション

これらはRHELとバイナリ互換を持ちます。つまり、RHEL用に作られたソフトウェアがそのまま動作し、運用手順もほぼ同じです。

1.1.3 CentOSからAlmaLinuxへの移行背景

かつて、RHEL互換ディストリビューションの代表格はCentOSでした。CentOSは2004年から長年にわたり、無償でRHEL相当の機能を提供し、多くの企業や個人に利用されてきました。

しかし、2020年12月、Red Hat社はCentOS 8のサポートを当初の予定より大幅に早く終了し、今後は「CentOS Stream」という開発版的な位置づけに移行すると発表しました。これは多くのユーザーにとって衝撃的なニュースでした。

この状況を受けて、2021年にAlmaLinuxプロジェクトが発足しました。CloudLinux社が初期資金を提供し、非営利団体「AlmaLinux OS Foundation」が設立されました。「Alma」はスペイン語で「魂」を意味し、Linuxコミュニティへの敬意を込めた名前です。

1.1.4 AlmaLinux 10の位置づけと特徴

AlmaLinux 10は、2025年5月にリリースされたメジャーバージョンです。RHEL 10と完全な互換性を持ちながら、コミュニティからの要望に応えた独自の改善も含まれています。

AlmaLinux 10の主な特徴は以下の通りです。

  • Kernel 6.12系: 最新のハードウェアサポートとパフォーマンス改善
  • systemd 257: システムとサービス管理の最新版
  • dnf5: 高速化されたパッケージマネージャ
  • x86-64-v2サポート: RHELでは廃止された古いCPUへのサポートを維持
  • SPICEサポート: 仮想デスクトップ環境のプロトコルを再有効化
  • Frame Pointers有効化: システム全体のパフォーマンス分析を容易に

サポート期間は、アクティブサポートが2030年5月31日まで、セキュリティサポートが2035年5月31日までと、非常に長期にわたります。

1.1.5 エンタープライズLinuxとして選ばれる理由

なぜ企業はAlmaLinuxのようなエンタープライズLinuxを選ぶのでしょうか。主な理由は以下の通りです。

  • 長期サポート: 10年間のセキュリティアップデート
  • 安定性: 厳格なテストを経たパッケージのみ提供
  • 互換性: RHEL用ソフトウェアがそのまま動作
  • 商用サポート: 必要に応じてサードパーティからサポートを購入可能
  • コスト: OSライセンス費用が無料

本ガイドでAlmaLinuxを学ぶことで、同様の操作がRHELやRocky Linuxでもできるようになります。これは就職や転職において大きなアドバンテージとなります。

1.2 AlmaLinux 10の新機能と技術スタック

1.2.1 Kernel 6.x系の主要な変更点

カーネル(Kernel)とは、OSの中核部分です。ハードウェアとソフトウェアの橋渡しを行い、メモリ管理、プロセス管理、デバイスドライバの制御などを担当します。

AlmaLinux 10はKernel 6.12系を搭載しています。以前のバージョン(AlmaLinux 9はKernel 5.14系)と比較して、以下のような改善があります。

  • パフォーマンス向上: I/Oスケジューラやメモリ管理の最適化
  • 最新ハードウェア対応: 新しいCPU、GPU、ストレージデバイスのサポート
  • セキュリティ強化: 新しいセキュリティ機能の追加
  • ファイルシステム: Btrfsサポートの追加(10.1以降)

1.2.2 systemd v257の新機能

systemd(システムディー)は、Linuxシステムの起動プロセスやサービス(バックグラウンドで動作するプログラム)を管理するソフトウェアです。現在のほとんどのLinuxディストリビューションで採用されています。

AlmaLinux 10ではsystemd 257が採用されています。主な特徴は以下の通りです。

  • サービスの起動・停止・状態確認を統一的に管理
  • 依存関係に基づいた並列起動による高速ブート
  • ジャーナル(journald)による統合ログ管理
  • タイマー機能によるスケジュール実行(cronの代替として使用可能)

systemdの操作は第5章で詳しく学びます。

1.2.3 dnf5への移行(dnfからの違い)

パッケージマネージャとは、ソフトウェアのインストール、アップデート、削除を管理するツールです。AlmaLinux 10では、従来のdnfからdnf5に移行しました。

dnf5の主な特徴は以下の通りです。

  • 高速化: C++で書き直され、従来のPython版より大幅に高速
  • メモリ効率: リソース消費が少ない
  • 互換性: 基本的なコマンド構文はdnfとほぼ同じ

実際の操作では、dnfコマンドを実行すると自動的にdnf5が呼び出されるため、特別な意識なく移行できます。パッケージ管理の詳細は第3章で学びます。

1.2.4 nftablesベースのfirewalld

ファイアウォールとは、ネットワーク通信を制御し、不正なアクセスからシステムを守る仕組みです。AlmaLinux 10では、firewalldというファイアウォール管理ツールが標準で有効になっています。

firewalldの内部ではnftables(エヌエフテーブルズ)というフレームワークが使用されています。これは従来のiptablesを置き換える新しい技術で、より柔軟で効率的なパケットフィルタリングを提供します。

ファイアウォールの設定は第6章で学びます。

1.2.5 FIPS 140-3対応とセキュリティ強化

FIPS 140-3は、米国政府が定める暗号モジュールのセキュリティ要件です。政府機関や金融機関など、高いセキュリティが求められる環境では、この基準への準拠が求められることがあります。

AlmaLinux 10では、以下のセキュリティ強化が行われています。

  • ポスト量子暗号(PQC)対応: 将来の量子コンピュータに対抗できる暗号アルゴリズムのサポート
  • SELinux: 強制アクセス制御によるセキュリティ強化がデフォルトで有効
  • OpenSSL 3.5: 最新の暗号ライブラリ

セキュリティ設定は第7章で詳しく学びます。

1.3 学習環境の選択と準備

1.3.1 VPSとは何か

VPS(Virtual Private Server、仮想専用サーバー)とは、1台の物理サーバーを仮想化技術で複数の独立したサーバーに分割し、それぞれを専用サーバーのように利用できるサービスです。

VPSには以下のような特徴があります。

  • root権限: OSレベルから自由に設定・操作できる
  • 固定IPアドレス: インターネットからアクセス可能なグローバルIPが付与される
  • 24時間稼働: 常時起動しており、いつでもアクセス可能
  • 実務に近い環境: 本番環境と同様の構成で学習できる

本ガイドでは、シンVPSを使用します。シンVPSはエックスサーバー株式会社が提供する高性能VPSサービスで、AlmaLinux 10に対応しています。

1.3.2 なぜシンVPSを選ぶのか

シンVPSを学習環境として選ぶ理由は以下の通りです。

比較項目 シンVPS 2GBプラン ローカル仮想環境
コスト 月額約1,150円〜 無料(PCのリソースを使用)
セットアップ ◎ 数分で完了 △ VirtualBox導入等が必要
実務への近さ ◎ 本番環境と同等 △ ネットワーク環境が異なる
ネットワーク学習 ◎ グローバルIP、SSH、ファイアウォール △ NATで制限あり
AlmaLinux 10対応 ◎ OSイメージで即利用可能 ○ ISOから手動インストール
PCへの負荷 ◎ なし(クラウド上で動作) △ メモリ・CPU消費あり

シンVPSの2GBプランは、以下のスペックを持ちます。

  • CPU: 3コア(AMD EPYC)
  • メモリ: 2GB
  • ストレージ: NVMe SSD 150GB
  • ネットワーク: 10Gbps共有回線

このスペックはAlmaLinux 10の学習に十分であり、LAMPスタック(Linux + Apache + MariaDB + PHP)やNginx、Podmanなどの実践演習も快適に行えます。

⚠️ 重要: VPSはインターネットに公開されたサーバーです。セキュリティ設定を怠ると、不正アクセスの標的になる可能性があります。本ガイドでは、セキュリティを意識した設定方法も併せて学んでいきます。

1.3.3 SSH接続の準備

VPSへの接続にはSSH(Secure Shell)を使用します。SSHは、ネットワーク経由で安全にサーバーを操作するためのプロトコルです。通信内容が暗号化されるため、パスワードやコマンドが第三者に傍受されることを防ぎます。

SSH接続に必要なソフトウェアは、OSごとに異なります。

Windowsの場合:

Windows 10以降では、PowerShellまたはコマンドプロンプトからSSH接続が可能です。追加のソフトウェアは不要ですが、より便利に使いたい場合は以下のツールもあります。

  • Windows Terminal: Microsoft Storeから無料でインストール可能。複数タブ対応で使いやすい
  • TeraTerm: 日本で広く使われているSSHクライアント(https://github.com/TeraTermProject/teraterm/releases
  • PuTTY: 軽量で人気のSSHクライアント

macOSの場合:

ターミナル.app(アプリケーション → ユーティリティ → ターミナル)が標準で使用できます。追加のソフトウェアは不要です。

Linuxの場合:

ほとんどのディストリビューションでターミナルエミュレータが標準搭載されており、sshコマンドがそのまま使用できます。

1.4 シンVPSの契約とサーバー作成

1.4.1 シンVPSアカウントの作成

まず、シンVPSのアカウントを作成します。


  1. 上記からシンVPS公式サイトにアクセス
  2. 「お申し込み」ボタンをクリック
  3. 「すぐにスタート!新規お申込み」を選択
  4. メールアドレス、パスワード、氏名、住所などの必要事項を入力
  5. SMS認証または電話認証を完了
  6. 支払い方法を設定(クレジットカードまたはプリペイド決済)

💡 Tips: シンVPSの最低利用期間は3ヶ月です。学習期間を考慮して契約期間を選択してください。長期契約ほど月額料金が安くなります。

1.4.2 VPSの申し込み

アカウント作成後、VPSを申し込みます。

  1. シンアカウントにログイン
  2. 「VPS」を選択し、「追加申し込み」をクリック
  3. 以下の設定を行います:
    • プラン: 2GB(メモリ2GB / CPU 3コア / SSD 150GB)
    • サーバーの契約期間: 任意(3ヶ月以上)
    • イメージタイプ: 「OS」を選択
    • OS: AlmaLinux 10.1 (64bit)を選択
    • rootパスワード: 強力なパスワードを設定(後で使用します)
    • SSH Key: 「キーを作成する」を選択(推奨)
  4. 利用規約に同意し、「お申込み内容を確認する」をクリック
  5. 内容を確認し、「お支払いへ進む」をクリック
  6. 支払いを完了

🚫 重要: rootパスワードは非常に重要です。推測されにくい強力なパスワード(大文字・小文字・数字・記号を含む12文字以上)を設定し、安全な場所に記録しておいてください。

1.4.3 SSH鍵の保存

「キーを作成する」を選択した場合、秘密鍵ファイルがダウンロードされます。この鍵は絶対に紛失しないよう、安全な場所に保管してください。

ダウンロードされるファイル名は通常、shin-vps_key_XXXXXXXX.pemのような形式です。

Windowsの場合:

  1. ダウンロードした.pemファイルを、ユーザーフォルダ内に.sshフォルダを作成して保存
    • 例: C:\Users\あなたのユーザー名\.ssh\shin-vps_key.pem

macOS/Linuxの場合:

  1. ダウンロードした.pemファイルを~/.ssh/に移動
    mv ~/Downloads/shin-vps_key_*.pem ~/.ssh/
    chmod 600 ~/.ssh/shin-vps_key_*.pem

chmod 600コマンドは、ファイルの権限を所有者のみ読み書き可能に設定します。SSH鍵ファイルはこの権限設定が必須です。

1.4.4 サーバー情報の確認

VPSの作成が完了すると、VPSパネルでサーバー情報を確認できます。

  1. シンアカウントにログイン
  2. 「VPS」→「VPS管理」をクリック
  3. 作成したサーバーの「VPS管理」をクリック

以下の情報をメモしておきましょう。

  • IPアドレス: サーバーに接続するためのグローバルIPアドレス(例: 203.0.113.100)
  • ホスト名: サーバーの識別名

1.4.5 パケットフィルターの設定

シンVPSには、VPS側で通信を制御する「パケットフィルター」機能があります。学習中はこの機能を活用します。

  1. VPS管理画面で「パケットフィルター設定」をクリック
  2. 「ONにする(推奨)」を選択
  3. 「変更する」をクリック
  4. 「パケットフィルター設定を追加する」をクリック
  5. 以下のフィルターを追加:
    • SSH: ポート22を許可(接続元は「すべて許可」または自分のIPアドレスのみに制限)

💡 Tips: 後の章でWebサーバーを構築する際は、HTTP(ポート80)やHTTPS(ポート443)も追加で許可する必要があります。

1.5 初回接続と初期設定

1.5.1 SSH接続の実行

サーバーが起動したら、SSH接続を行います。

Windowsの場合(PowerShell):

  1. スタートメニューから「PowerShell」を検索して起動
  2. 以下のコマンドを入力(IPアドレスと鍵ファイル名は実際のものに置き換え)
ssh -i C:\Users\あなたのユーザー名\.ssh\shin-vps_key.pem root@203.0.113.100

macOS/Linuxの場合(ターミナル):

  1. ターミナルを起動
  2. 以下のコマンドを入力
ssh -i ~/.ssh/shin-vps_key.pem root@203.0.113.100

初回接続時は、以下のような確認メッセージが表示されます。

The authenticity of host '203.0.113.100 (203.0.113.100)' can't be established.
ED25519 key fingerprint is SHA256:XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX.
This key is not known by any other names.
Are you sure you want to continue connecting (yes/no/[fingerprint])? 

yesと入力してEnterを押します。

接続に成功すると、以下のようなプロンプトが表示されます。

[root@sv12345678901234 ~]# 

⚠️ 注意: SSH鍵を使わずにパスワード認証で接続する場合は、以下のコマンドを使用します。ただし、セキュリティの観点からSSH鍵認証を推奨します。

ssh root@203.0.113.100

パスワードを求められたら、VPS作成時に設定したrootパスワードを入力します。

1.5.2 システム情報の確認

接続できたら、まずシステム情報を確認してみましょう。

[実行ユーザー: root]

cat /etc/os-release

以下のような出力が表示されます。

NAME="AlmaLinux"
VERSION="10.1 (Heliotrope Lion)"
ID="almalinux"
ID_LIKE="rhel centos fedora"
VERSION_ID="10.1"
PLATFORM_ID="platform:el10"
PRETTY_NAME="AlmaLinux 10.1 (Heliotrope Lion)"
...

カーネルバージョンも確認してみましょう。

[実行ユーザー: root]

uname -r
6.12.0-124.8.1.el10_1.x86_64

1.5.3 一般ユーザーの作成

セキュリティの観点から、rootユーザーでの日常的な操作は推奨されません。まず、一般ユーザーを作成しましょう。

[実行ユーザー: root]

useradd developer
passwd developer

パスワードの入力を求められます。

New password: 
Retype new password: 
passwd: all authentication tokens updated successfully.

次に、このユーザーにsudo権限を付与します。sudoとは、一般ユーザーが一時的に管理者権限でコマンドを実行するための仕組みです。

[実行ユーザー: root]

usermod -aG wheel developer

このコマンドは、developerユーザーを「wheel」グループに追加します。AlmaLinuxでは、wheelグループに属するユーザーがsudoを使用できます。

1.5.4 一般ユーザーでのSSH接続設定

作成した一般ユーザーでもSSH鍵認証で接続できるように設定します。

[実行ユーザー: root]

# developerユーザーの.sshディレクトリを作成
mkdir -p /home/developer/.ssh
chmod 700 /home/developer/.ssh

# rootの公開鍵をコピー
cp /root/.ssh/authorized_keys /home/developer/.ssh/
chown -R developer:developer /home/developer/.ssh
chmod 600 /home/developer/.ssh/authorized_keys

これで、developerユーザーでも同じSSH鍵で接続できるようになりました。

1.5.5 SSH接続のテスト

一度ログアウトして、developerユーザーで再接続してみましょう。

[実行ユーザー: root]

exit

ローカルPCのターミナルから、今度はdeveloperユーザーで接続します。

ssh -i ~/.ssh/shin-vps_key.pem developer@203.0.113.100

接続に成功すると、以下のようなプロンプトが表示されます。

[developer@sv12345678901234 ~]$ 

プロンプトの最後が$(一般ユーザー)になっていることを確認してください。rootユーザーの場合は#です。

1.5.6 ネットワーク接続の確認

ネットワーク接続が正常に機能しているか確認します。

[実行ユーザー: developer]

ip addr show

以下のような出力が表示されます。

1: lo: <LOOPBACK,UP,LOWER_UP> mtu 65536 qdisc noqueue state UNKNOWN group default qlen 1000
    link/loopback 00:00:00:00:00:00 brd 00:00:00:00:00:00
    inet 127.0.0.1/8 scope host lo
       valid_lft forever preferred_lft forever
    inet6 ::1/128 scope host noprefixroute 
       valid_lft forever preferred_lft forever
2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc fq_codel state UP group default qlen 1000
    link/ether xx:xx:xx:xx:xx:xx brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
    inet 203.0.113.100/23 brd 203.0.113.255 scope global eth0
       valid_lft forever preferred_lft forever

「eth0」(または類似の名前)のところに表示されているIPアドレスが、VPSパネルで確認したグローバルIPアドレスと一致していることを確認してください。

1.5.7 システムアップデートの実行

サーバー構築直後は、セキュリティアップデートが公開されている可能性があります。システムを最新の状態に更新しましょう。

[実行ユーザー: developer]

sudo dnf update -y

初回のsudo実行時には、developerユーザーのパスワード入力を求められます。

[sudo] password for developer: 

コマンドの説明:

  • sudo: 管理者権限でコマンドを実行
  • dnf: パッケージマネージャ(内部的にdnf5が実行されます)
  • update: インストール済みパッケージを更新
  • -y: 確認プロンプトに自動で「yes」と回答

パッケージのダウンロードと更新が開始されます。完了まで数分かかる場合があります。

💡 Tips: アップデート後に「Complete!」と表示されれば成功です。カーネルが更新された場合は、再起動することで新しいカーネルが有効になります。

1.5.8 再起動の方法

カーネルが更新された場合や、設定変更後に再起動が必要な場合は、以下のコマンドを使用します。

[実行ユーザー: developer]

sudo reboot

再起動後、SSH接続が切断されます。1〜2分待ってから、再度SSH接続してください。

⚠️ 注意: VPSは24時間稼働しているため、通常は再起動の必要はありません。カーネル更新時や重大な設定変更時のみ再起動を行います。

1.6 よくあるトラブルと対処法

1.6.1 SSH接続ができない

症状: Connection refusedConnection timed outが表示される

考えられる原因と対処法:

  1. サーバーが起動していない
    • VPSパネルでサーバーの状態を確認
    • 「停止中」の場合は「起動」ボタンをクリック
  2. パケットフィルターでSSHが許可されていない
    • VPSパネルの「パケットフィルター設定」を確認
    • SSHフィルター(ポート22)が追加されているか確認
  3. IPアドレスが間違っている
    • VPSパネルで正しいIPアドレスを確認
  4. SSH鍵ファイルの権限が不適切
    • macOS/Linuxの場合: chmod 600 ~/.ssh/shin-vps_key.pem

1.6.2 Permission denied (publickey)が表示される

症状: SSH鍵認証でエラーになる

考えられる原因と対処法:

  1. SSH鍵ファイルのパスが間違っている
    • ファイルの存在と正しいパスを確認
  2. ユーザー名が間違っている
    • 初期状態ではrootで接続
    • 一般ユーザーで接続する場合は、事前に設定が必要
  3. 別のSSH鍵を使用している
    • VPS作成時にダウンロードした鍵ファイルを使用しているか確認

パスワード認証で接続できる場合は、一時的にパスワードで接続して設定を修正できます。

1.6.3 ログインできない(パスワード認証の場合)

症状: パスワードを入力しても「Permission denied」と表示される

考えられる原因と対処法:

  1. パスワードの入力ミス
    • Caps Lockがオンになっていないか確認
    • パスワードは画面に表示されません(入力されていないように見えても、入力されています)
  2. rootログインが無効化されている
    • VPSパネルの「VNCコンソール」から接続して設定を確認

1.6.4 VNCコンソールの使い方(緊急時)

SSH接続ができない場合でも、VPSパネルの「VNCコンソール」機能を使用してサーバーに接続できます。

  1. VPSパネルにログイン
  2. 該当サーバーの「VPS管理」をクリック
  3. 「コンソール」をクリック
  4. ブラウザ上でコンソール画面が開きます
  5. rootユーザーとパスワードでログイン

VNCコンソールはSSH設定を誤った場合の復旧手段として覚えておいてください。

📝 メモ: VNCコンソールはウェブブラウザ経由のため、SSH接続と比べて操作性は劣ります。日常的な操作はSSH接続で行い、VNCコンソールは緊急時の復旧用として使用しましょう。

1.6.5 サーバーが応答しなくなった

症状: SSH接続もVNCコンソールも応答がない

対処法:

  1. VPSパネルから「再起動」を実行
  2. それでも復旧しない場合は「強制停止」→「起動」を試す
  3. 状況が改善しない場合は、「OSの再インストール」で初期状態に戻すことも検討

⚠️ 注意: OSの再インストールを行うと、サーバー上のすべてのデータが消去されます。重要なデータがある場合は、事前にバックアップを取っておきましょう。

章末まとめ

この章では、以下の内容を学びました。

  • AlmaLinuxの位置づけ: RHEL互換の無償エンタープライズLinuxディストリビューション
  • AlmaLinux 10の特徴: Kernel 6.12、systemd 257、dnf5など最新の技術スタック
  • VPSの利点: 実務に近い環境で学習できる、グローバルIPでのネットワーク学習が可能
  • シンVPSの契約: アカウント作成からサーバー構築までの手順
  • SSH接続: 鍵認証を使用した安全なサーバー接続方法
  • 初期設定: 一般ユーザーの作成、sudo権限の付与、システムアップデート
  • トラブルシューティング: SSH接続の問題解決、VNCコンソールの活用

AlmaLinuxを学ぶことで、RHELやRocky Linuxといった他のRHEL系ディストリビューションでも同様の操作ができるようになります。エンタープライズLinuxのスキルは、サーバー管理、クラウドインフラ、DevOpsなど、幅広い分野で役立ちます。

練習問題

問題1: AlmaLinuxとRHEL(Red Hat Enterprise Linux)の関係について、正しい説明はどれですか?

  1. AlmaLinuxはRHELの有償サポート版である
  2. AlmaLinuxはRHELとバイナリ互換を持つ、無償のコミュニティ主導ディストリビューションである
  3. AlmaLinuxはRHELの開発版(ベータ版)である
  4. AlmaLinuxとRHELは全く異なるOSであり、互換性はない

問題2: VPSでAlmaLinux 10を利用する場合、セキュリティの観点から推奨されるSSH接続方法はどれですか?

  1. rootユーザーでパスワード認証
  2. 一般ユーザーでSSH鍵認証
  3. 匿名ユーザーでパスワードなし接続
  4. telnetプロトコルでの接続

問題3: シンVPSでSSH接続ができない場合、最初に確認すべき項目として適切でないものはどれですか?

  1. VPSパネルでサーバーが起動しているか
  2. パケットフィルターでSSH(ポート22)が許可されているか
  3. SSH鍵ファイルのパスが正しいか
  4. サーバーのデスクトップ壁紙の設定

解答:

問題1: b(AlmaLinuxはRHELとバイナリ互換を持つ、無償のコミュニティ主導ディストリビューションである)

問題2: b(一般ユーザーでSSH鍵認証 – パスワード認証よりSSH鍵認証が安全、rootでの直接ログインよりも一般ユーザー+sudoが推奨されます)

問題3: d(サーバーのデスクトップ壁紙の設定 – Minimal InstallではGUI環境がなく、SSH接続とは無関係です)

次章への橋渡し

お疲れさまでした。これでAlmaLinux 10の学習環境が整いました。

次の第2章では、Linuxを操作するための基礎となるコマンドライン操作を学びます。ファイルの操作、テキストの編集、ディレクトリの移動など、すべてのLinux操作の土台となるスキルを身につけていきましょう。

コマンドラインは最初は取っ付きにくく感じるかもしれませんが、一度慣れてしまえばマウス操作よりも効率的に作業できるようになります。次章では、実際にコマンドを入力しながら、一つひとつ丁寧に解説していきます。