【SV】第4章:応用技術の習得 ~実務応用力を向上させる~
実務経験を積み、基本的な運用業務に慣れてきたら、次に求められるのは応用力 です。サーバーエンジニアとして成長するためには、仮想環境のリソース管理、高可用性の設計、負荷分散、パフォーマンスチューニング など、より高度な技術を習得する必要があります。
特にオンプレミス環境では、システム全体の最適化を考え、障害を未然に防ぐ力が求められます。本章では、応用技術をどのように実務に活かすか? を解説し、さらなるスキルアップを目指します。
4-1. 仮想環境のリソース管理
📌 仮想環境の最適化が運用の鍵
オンプレミス環境では、仮想化技術を活用することで物理サーバーの効率的な利用、柔軟な拡張性、高可用性の確保が可能になります。
しかし、適切なリソース管理をしなければ、仮想環境全体のパフォーマンスが低下し、業務に影響を与える可能性があります。
そのため、CPU・メモリ・ストレージ・ネットワークのリソースを適切に配分し、オーバーコミットを防ぐ ことが重要です。
✅ 仮想環境で考慮すべきリソース管理のポイント
- CPUリソース管理(オーバーコミットの影響を理解する)
- メモリリソース管理(スワップ・バルーニングを防ぐ)
- ストレージ管理(ディスクI/Oの最適化、スナップショットの管理)
- ネットワークの最適化(仮想スイッチ、VLAN設定)
📌 具体例:「CPUオーバーコミットの適正管理」
CPUオーバーコミットとは?
1台の物理CPUコアに対して、複数の仮想CPU(vCPU)を割り当てること です。
適切に活用すればリソースを最大限有効活用できますが、過剰にオーバーコミットするとVM間でリソース競争が発生し、レスポンスが著しく低下 します。
1. オーバーコミット率の確認
- VMwareの場合:
esxtop
を実行し、%RDY
(CPU Ready)値を確認- %RDYが5%以上 なら、CPUのリソース不足の可能性が高い
- Linux KVMの場合:
virsh list
で稼働中のVM一覧を確認し、top
コマンドでCPU使用率を監視
2. CPUリソースの最適化
- オーバーコミット率を 2:1 以下に抑える(物理8コアなら、全VMの合計が16 vCPUまで)
- CPUソケットをまたぐvCPU割り当てをしない(NUMA考慮)
- 高負荷アプリケーションは専用のCPUリソースを確保する(リソース予約機能を活用)
- 負荷の低いVMは統合し、不要なVMを削減する
💡 CPUのオーバーコミットは適度に活用し、過剰な割り当てを避けることでパフォーマンスを安定させよう!
📌 今日からできるアクション
✅ 自社の仮想環境でCPUオーバーコミット率を調査し、過剰なリソース割当がないか確認する
✅ esxtop
や top
を使用し、CPU Ready Time をチェックする
✅ VMのリソース割当を見直し、負荷が集中しているVMのリソース調整を検討する
4-2. 高可用性(HA)と負荷分散の設計
📌 可用性を向上させる仕組みを理解する
オンプレミス環境では、単一障害点(SPOF: Single Point of Failure) を排除し、
システムが障害時にも安定稼働できるように設計することが求められます。
そのためには、クラスタリング技術や負荷分散(ロードバランシング)の適用が不可欠 です。
✅ 可用性を高める手法
- HAクラスタ(Pacemaker + Corosync)による自動フェイルオーバー
- ロードバランサー(HAProxy, F5, Nginx)を活用したトラフィック分散
- ストレージの冗長化(RAID, SAN, NAS)
📌 具体例:「ロードバランサーによる負荷分散」
1. ロードバランサーを導入する理由
トラフィックが1台のサーバーに集中すると、システムの応答速度が低下し、最悪の場合ダウンするリスクがあります。
これを防ぐために、複数のサーバーに負荷を分散するロードバランサーを導入 します。
2. HAProxyを活用した負荷分散の設定
- バックエンドサーバーを複数台用意(Webサーバーなど)
- HAProxyの設定でラウンドロビン方式の負荷分散を構成
haproxy.cfg
の例:frontend http_front
bind *:80
default_backend web_servers
backend web_servers
balance roundrobin
server web1 192.168.1.101:80 check
server web2 192.168.1.102:80 check
- トラフィックが均等に分散され、負荷集中を防止
💡 負荷分散の設計を適切に行うことで、システムの可用性を向上させる!
📌 今日からできるアクション
✅ 自社のシステムに単一障害点がないか確認する(負荷が特定のサーバーに集中していないか?)
✅ HAProxyやNginxの負荷分散設定を調査し、適用できるか検討する
✅ クラスタリング技術(Pacemaker + Corosync)の基礎を学ぶ
4-3. パフォーマンスチューニングとトラブルシューティング
📌 システムのボトルネックを特定し、最適化する
仮想環境のパフォーマンスを最大化するためには、CPU・メモリ・ディスクI/O・ネットワークのどこにボトルネックがあるのかを見極め、適切に対処 することが必要です。
✅ パフォーマンス診断ツール
- CPU:
top
,htop
,mpstat
- メモリ:
free -m
,vmstat
- ディスク:
iostat -x
,iotop
- ネットワーク:
iftop
,netstat -an
📌 具体例:「ディスクI/Oの負荷を軽減する」
- 現在のディスクI/O負荷を確認
iostat -x 1 5
でディスクの使用状況を監視iotop
でディスクを多く消費しているプロセスを特定
- 負荷軽減の対策
- 不要なログやキャッシュを削除
- SSDやNVMeストレージへの移行を検討
- RAID 10やストライピングでディスクアクセスを高速化
💡 ディスクI/Oは仮想環境のボトルネックになりやすいため、定期的な監視と最適化が重要!
📌 今日からできるアクション
✅ iostat -x
を実行し、ディスクI/Oの負荷状況を確認する
✅ 仮想環境のストレージ構成(RAID設定、ストレージ種類)を調査し、最適化の可能性を考える
✅ 定期的なパフォーマンス監視を行い、異常がないかチェックする習慣をつける
💡 仮想環境のリソース管理と最適化を習得し、安定したシステム運用を実現しよう!