第16回
文章作成:構成〜添削までAIと協働
- 目的:構成・表現・添削などの文章作成補助を活用する
- ゴール:文章作成をAIと協働しながら完成まで進められる
- 対象読者:ChatGPTを使って提案書や業務文書を作成しているが、「構成・表現・推敲のどこをAIに任せるべきか」が曖昧な初心者〜中級者
16-1. 書き出し支援:構成と導入文の生成
16-1-1. 提案書の「構成」が浅いと、どんなに良いアイデアも通らない
ITシステム導入提案書を書く際、多くの人が「何を書くか」に集中し、「どう構成するか」を後回しにしがちです。
しかし、上層部が読む提案書ほど、構成の設計がすべてを左右します。
たとえば、以下のようなケースでは構成が大きく変わります:
- 目的が「決裁を取る」のか、「部門内の合意を得る」のか
- 読者が「経営層」か「情シス」か「現場リーダー」か
- 文書の役割が「比較・検討」か「導入判断」か
ChatGPTで構成案や導入文を生成する前に、自分が書こうとしている提案書が誰のために、何を決めさせるために存在するのかを明確にする必要があります。
16-1-2. ChatGPTは「書く」より「考えさせる」ために使う
構成や導入文をそのまま書かせる前に、ChatGPTを「思考補助ツール」として使うのが最も有効です。
以下のような問いを投げかけてみてください:
- 「情シス部門の決裁者が関心を持つ提案書の構成とは?」
- 「現場リーダーに伝えるなら、導入効果を何章目に配置すべきか?」
- 「導入目的が“属人化の排除”なら、導入文はどのように始めるべきか?」
このように、ChatGPTは“構成を出す前”に“構成を考える材料”として使えます。
16-1-3. 導入文の正解はないが、「構造の型」は存在する
提案書の導入で大切なのは、「何を最初に伝えるべきか」を論理的に判断することです。以下は導入文によく使われる3構造です:
- 問題→原因→提案の方向性(現状課題起点)
- 背景→影響→提案の必要性(組織環境起点)
- 目的→現状→導入の意義(目的先出し型)
ChatGPTに導入文を生成させる際には、必ず「この3つのうち、どの型で出力してほしいか」を明示する必要があります。
「導入文では、現状課題→原因→提案の方向性の順に、部長職にも理解しやすい内容で200字以内で書いてください」
16-1-4. ChatGPTの構成案は「草案」──決して「設計図」ではない
生成された構成案を採用する前に、まず次のような問いを自分に投げかけましょう:
- 「この章立ての順序で、意思決定者は納得するか?」
- 「費用対効果は“前”にあるべきか、“後”にあるべきか?」
- 「導入効果は定量的に語る必要があるか?」
提案書は、構成の順序・密度・論点配置によって承認確率が変わります。ChatGPTの出力は、通すための「下書き」であって「完成品」ではありません。
「この構成案では“導入の緊急性”が弱いので、第1章で現場の業務遅延データを出してください」
16-1-5. 提案書の「目的」によって構成はどう変わるか?
提案の目的によって、構成の重心は変わります。ChatGPTに依頼する際には、構成に必要な視点も目的別に含めるべきです。
目的 | 重視すべき構成要素 | 導入文の焦点 |
---|---|---|
予算承認の獲得 | 投資対効果、業務インパクト、コスト内訳 | ROIと「今やるべき理由」を前面に |
業務部門の合意形成 | 業務課題、改善メリット、導入のしやすさ | 「現場の負担にならない提案」であることの強調 |
情シスとの技術検討 | 構成比較、セキュリティ、運用コスト | 要件の網羅性と採用根拠の明示 |
16-1-6. ChatGPTの構成案、“良し悪し”をどう見極めるか?
構成案をそのまま受け取るのではなく、「読み手にとって妥当か?」を以下の5点で精査しましょう:
- 論理順序は自然か?
- 章タイトルは具体的か?
- 意思決定に必要な情報が含まれているか?
- 競合比較・選定根拠があるか?
- 結論が「何をしてほしいか」まで導いているか?
16-1-7. よくある社内提案シーン別プロンプトテンプレート
以下のテンプレートは、職場でそのままChatGPTに貼って使える形で設計されています:
情シス向け(要件比較)
「既存グループウェアからの移行を検討中です。情シス部門に向けて、選定理由と機能比較を中心に構成案と導入文を提案してください。トーンは論理的に。」
経営層向け(予算獲得)
「ITシステム導入による業務効率化の提案を経営層に提示します。決裁者にとって納得感のある構成案と、投資判断を促す導入文を出してください。フォーマルにお願いします。」
現場部門向け(合意形成)
「RPA導入に関する提案を業務部門に向けて作成します。負担軽減やメリットをわかりやすく伝える構成と導入文を提案してください。現場職にも伝わる言葉で。」
16-2. 下書き支援:段落生成と文脈接続
16-2-1. ChatGPTに任せるのは「言葉の整形」であって「論点の設計」ではない
構成と導入文が固まったあと、いよいよ本文へ進む段階になります。
このとき多くの人がChatGPTに「第2章を書いて」と丸投げしがちですが、それでは浅く・的外れな文章になりがちです。
なぜなら、ChatGPTは「何を主張すべきか」を判断してくれません。あくまで論点を指定されたときに、それを“表現”することが得意なツールです。
提案書における本文とは、「構成=骨格」に対して、「各章に配置する論点=肉付け」です。この段落単位の論点設計を読者自身が担わなければ、ChatGPTの出力も的を外します。
16-2-2. 論点アイデア出し:段落の「中身」が浮かばないときの補助設計
「この章、何を書けばいいんだっけ…?」という状態は、“構成案はあるけど中身が思いつかない”典型です。
そのときは、ChatGPTにこう聞いてください:
「“現状課題の分析”という章に入れるべき段落テーマの候補を5つ、提案書向けに出してください。」
すると、ChatGPTは例えば以下のような候補を返してくれます:
- 定型業務の処理時間ばらつき
- 属人化による引き継ぎ難易度
- 業務ミス発生率とコスト換算
- 顧客対応遅延のケース分析
- Excelベース運用の非効率性
これを「段落の設計材料」として活用し、1段落ずつChatGPTに書かせていく。
この方法により、“構成はあるけど中身が浮かばない”問題が解消されます。
16-2-3. 論理的段落の構成テンプレート(型)を使い分ける
ChatGPTに段落を生成させる際、出力の質を左右するのは「構造」です。
以下に、ITシステム導入提案で汎用性の高い段落構成テンプレートを示します:
- 型A|課題→原因→影響:
例:「業務遅延の要因は属人化にあり、それが対応スピードの低下を招いている。」 - 型B|主張→根拠→結論:
例:「RPA導入は人的ミスを削減できる。実際、導入済企業では処理ミスが38%減少した。よって本提案は有効である。」 - 型C|比較→評価→選定理由:
例:「A社製品はUIに優れるがコストが高い。一方B社は価格面で優れるため、本提案ではB社を推す。」
プロンプト例:
「“RPA導入による業務標準化”というテーマを、型A(課題→原因→影響)に基づいて段落構成してください。150字以内で、提案書の文体で。」
このように構成型を明示することで、ChatGPTの出力は「なんとなく説明」から「筋の通った主張」へ昇華されます。
16-2-4. 出力された段落は“そのまま使わない”が原則
ChatGPTの段落出力は、表面上きれいでも次のような問題を含むことがあります:
- 前後との論理接続が弱い
- 抽象語の多用で中身が薄い
- 読者(決裁者)の関心からズレている
段落生成後は、必ず次の3点を自問してください:
- この段落は「何を主張しているのか」が明確か?
- その主張に対して「根拠や例」は含まれているか?
- この段落は前段落の「続きとして論理的に接続しているか」?
このチェックを習慣化すれば、ChatGPTの段落生成が“仮組み”から“素材化”に昇格します。
16-2-5. 文脈の接続は「問いと制約」で制御する
複数段落を連続して書かせたいとき、ChatGPTはしばしば話がズレたり、繰り返したりします。
これを防ぐには、「前の段落内容」と「次の段落で扱う論点」の両方をプロンプトで明示する必要があります。
「前段落では“業務処理の属人化が生むリスク”を説明しました。
次段落では、それに対するRPA導入の効果を“業務の標準化”の観点で150字以内で説明してください。」
このように、前提→目的→制約条件(文字数・文体)を明示することで、出力が一貫性を保ち、編集可能な文章になります。
16-2-6. ChatGPTを“段落職人”ではなく“論点整理人”として使う
下書き支援の本質は、「書く」ことではなく「考える」ことにあります。
ChatGPTはただの“文生成マシン”ではなく、「論点を洗い出す」「構造を整える」「書き手の論理を映す鏡」として使うべきです。
一文ずつ任せるのではなく、次のように使ってください:
- 「この章の中で書くべき論点を出してください」
- 「この段落は“主張が弱い”気がします。なぜか教えてください」
- 「この2つの段落、どちらが説得力あるか比較して理由をください」
このように、出力を読む/問い直す/比較するという使い方こそが、ChatGPTを“文章構築の共同作業者”として活用する鍵になります。
16-3. 表現調整:言い換えと簡潔化
16-3-1. 表現調整は“理解と納得を促す構文設計”である
ITシステム導入提案書において、内容が正しいだけでは不十分です。
読み手が「迷わず理解し、抵抗なく読み進められ、合意しやすい状態」に整える必要があります。
そのために必要なのが「表現の調整」です。これは単なる“言葉の修正”ではなく、読解コストを下げ、論理を通し、印象を整える構文設計の作業です。
ChatGPTはこの工程で“思考を代行せず、構文を補助する役割”として活用します。
16-3-2. 自分の文章の「読みにくさ」に自分では気づけない
提案書には、読み手を混乱させる文章の特徴が多く潜んでいます:
- 主語と述語の距離が遠い:「本提案における業務改善の効果についての検討を実施いたします」
- 冗長な接続語:「また、さらに加えて〜」「その結果として〜ということができます」
- 抽象名詞が多すぎる:「安定性の向上による信頼性の確保」→ 動作・行動が見えない
これらは、文法的には正しくても、実務文書としてはノイズになります。
ChatGPTには、文を入力するだけでなく、「読みにくい原因を構造的に指摘してください」と頼むことで、思考の鏡として機能させましょう。
16-3-3. ChatGPTに「なぜこう書いたか」を説明させると、設計が身につく
「言い換えて」だけでは、ChatGPTは無難な表現を出すだけです。
表現力を高めるには、“なぜそのように書いたか”をChatGPTに説明させる必要があります。
「この文をフォーマルかつ論理的に書き直してください。そして、修正のポイントを3つに分けて解説してください。」
ChatGPTから:
- 主語を明確化し、曖昧さを排除
- 重複表現の簡略化
- 接続語の整理で論理展開を強化
このように構文の構成意図を言語化するプロセスこそが、書き手の表現設計力を養います。
16-3-4. 出力を「比較して、評価して、選ぶ」視点が必要
ChatGPTの真価は“1つの正解”ではなく“複数の選択肢”を提示できることです。
「以下の文を2通りに書き換えてください。
① 端的な結論重視/② 説得力ある展開重視。それぞれの特徴も説明してください。」
ChatGPTの出力例:
- ①:「この導入により業務時間を25%削減できる。」
- ②:「導入後、各工程における手作業が排除され、結果として業務時間は25%削減可能となる。」
このとき、どちらを選ぶかは「誰が読むか」「何を重視するか」で変わります。
その判断軸を持つことで、書き手はAIの提案に主導権を持てます。
16-3-5. 表現の簡潔化には“削ってはいけない情報”がある
「簡潔にしてください」と依頼すると、ChatGPTは情報を削ります。しかし、削ってはいけない情報まで消えることがあります。
典型例:
Before:RPAの導入によって、属人化の排除と標準化が同時に進み、業務効率が改善される。
After:RPA導入により業務効率が改善される。
削られたのは「属人化排除と標準化」という根幹の要素。
これは“簡潔化による意味の劣化”です。
ChatGPTに対しては、「要点を残しつつ簡潔に」「削除せず再構成する」といった条件を加える必要があります。
16-3-6. 読み手別に調整すべきトーンと表現のポイント
読み手が変われば、整えるべきポイントも変わります:
読み手 | 重視される表現 | ChatGPTへの指示語句例 |
---|---|---|
経営層 | 結論ファースト、数字、意思決定軸 | 「要点を冒頭に、数字で説得、300字以内」 |
現場部門 | 業務インパクト、操作イメージ、負担感 | 「読みやすく、導入後の現場変化をイメージ重視で」 |
情シス部門 | 技術的整合性、実行可能性、互換性 | 「技術要件を網羅し、論理的に接続した説明に」 |
16-3-7. 「プロっぽい文章」の5つの特徴を意識する
ChatGPTに言い換えさせた文が“整っているように見える”のに「なんとなく浅い」と感じる理由は、構文設計の“設計意図”が抜けているからです。
以下は、プロの文章に共通する5つの設計特徴です:
- 主語と結論が早く出る
- 語順が直線的(回りくどくない)
- 1文1主張で整理されている
- 論拠または数字で補強されている
- 文末表現にブレがない(ですます/である、が混在しない)
ChatGPTの出力がこれらのどれを満たしているか?を評価できるようになれば、「読める文」から「信頼される文」へ昇格できます。
16-3-8. ChatGPTの「失敗出力」を読んで見抜く目を持つ
最後に重要なのは、ChatGPTの出力にツッコミを入れる目を育てることです。以下はよくある“ダメな言い換え”です:
「この提案により、業務の効率性が一定程度高まることが期待されます。」
→ 曖昧語(一定程度・期待される)
→ 主語がない(誰が何をどう評価したのか)
→ 動作が不在(何をどう改善するのか)
このような表現に対して、「この文のどこが曖昧ですか?より明確な形に直して、理由も説明してください」と指示することで、ChatGPTは“言い換え”だけでなく“説明責任”も果たすようになります。
16-4. 推敲支援:トーンと構成の見直し
16-4-1. 推敲とは「読み手の頭の中を先回りする設計」である
ITシステム導入提案書の推敲とは、「文法ミスや冗長さを直す作業」ではありません。
それは“読み手の判断行動を想像し、文章の順番・トーン・主張の濃淡を最適化する工程”です。
ChatGPTを推敲支援に使う最大の価値は、自分では気づけない“読み手の視点”で再検証できることにあります。
16-4-2. トーン調整は「相手の立場で読み直す」ことから始める
同じ内容でも、経営層・現場・情シスでは伝え方を変える必要があります。
- 経営層:結論・費用・効果を最初に→「判断材料が先」
- 現場:導入後の変化と負担の軽減→「共感と実感」
- 情シス:互換性・運用・技術的妥当性→「論理と根拠」
ChatGPTにはこう依頼してください:
「この文を“経営層向け”として、結論先出し・定量性・判断材料重視でトーン調整してください」
さらに、「なぜそのように直したのか」まで説明させることで、トーン調整の構造が理解できます。
16-4-3. 構成の見直しは“読者の判断順序”を想像して設計する
提案書の構成で重要なのは、「何から説明すれば、相手は最も納得して動くか」です。
ChatGPTには次のように伝えてみてください:
「この構成案を、部長決裁者が“導入を検討しやすい順序”に並び替えてください。理由も添えて説明してください」
このとき、ChatGPTは「課題の緊急性→解決策→効果→コスト→リスク」など、判断ロジックの順序に基づいた構成再提案が可能です。
構成見直しは、「情報の正確性」ではなく、「伝わる順番」の問題であると認識することが鍵です。
16-4-4. ChatGPTに「読み手の気持ち」で読ませると反論を予測できる
ChatGPTは“読み手になりきる”ことができます。
この機能を使って、「読者が疑問に思う点」「反論したくなる表現」を洗い出せます。
プロンプト例:
「以下の提案文を、経営層の視点で読み、納得できない・曖昧に感じるポイントを挙げてください」
これにより、推敲の対象が「言葉」から「論点の弱さ」に移行します。
→ それこそが、“通る提案書”への推敲です。
16-4-5. ChatGPTに構成全体を再設計させるときの4ステップ
全文推敲のタイミングでは、構成そのものの再設計が必要になることがあります。
そのときは、次の4ステップでChatGPTに依頼します:
- ①読者と目的を明示
例:「情シス部門に向けて、導入決裁を促したい」 - ②現構成を共有
章立てを列挙(例:1.背景、2.課題、3.導入効果…) - ③読み手の判断プロセスを想定させる
「どの順で説明されると検討しやすいか」 - ④構成案の再提案を求める
「その順序で構成を再設計し、各章に一文説明をつけて」
このように、ChatGPTを“構成アドバイザー”として使うことで、提案書全体の筋が通ります。
16-4-6. 推敲の「到達点」を自分で評価する3つの問い
最終的に「この提案書は完成したか?」を判断するために、次の問いを自問してください:
- ① この順序で読めば、判断者はYESと言えるか?
- ② どの段落にも“読み手の疑問”に対する答えがあるか?
- ③ トーンと構成が、読み手の行動を促すようになっているか?
ChatGPTにも、最終確認として次のように依頼できます:
「この提案書を、部長職の読者が“通すべきだ”と感じる文章にするために、最後の調整点を教えてください」
これにより、推敲の目的は「完成」ではなく「納得される設計」に変わります。
次回予告|カスタムGPTを使って“あなた専用の書き手”を育てる
今回の第16回では、汎用のChatGPTを活用し、構成〜下書き〜推敲までの文章作成を協働的に行う方法を学びました。
しかし、業務やプロジェクトで繰り返し文章を作るなら、毎回プロンプトを調整するのは手間です。
次回の第17回では、そんな悩みを解決するために、GPTsストアの活用法と、あなた専用のカスタムGPTを作る方法を解説します。
- GPTsストアの探し方・選び方・使いどころ
- プロンプトを“プリセット化”したカスタムGPTの設計法
- よく使う業務に特化した“自分専用のAIアシスタント”の作り方
ChatGPTをただのツールから、“あなたの業務に特化した相棒”へ進化させるステップへ。
次回もぜひご期待ください。