AlmaLinux 9 総合ガイド 第2章

第2章: AlmaLinux 9のインストールと初期設定


2.1 インストール前の準備

2.1.1 インストールメディアの種類

  1. DVD ISOイメージ
  • 多くのパッケージが含まれているため、オフライン環境や不安定なネットワーク環境でのインストールに最適。
  • ファイルサイズが大きい(数GB)ため、ダウンロードに時間がかかる。
  1. Minimal ISOイメージ
  • 必要最低限のパッケージのみ含まれ、ファイルサイズが小さい。
  • インストール中にネットワークを介して追加パッケージをダウンロードするため、安定したインターネット接続が必要。
  1. Boot ISOイメージ
  • ブート専用の小さなイメージ。ほぼすべてのパッケージをネットワークから取得。
  • Minimalよりさらにサイズが小さいが、インストール時のネットワーク依存度が高い。

ポイント:
企業のオフライン環境やネットワークセグメントが厳しく制限されている場合は、DVD ISOが無難。一方でクラウドや自宅の高速ネット環境ではMinimal ISOやBoot ISOを利用しても問題ない。

2.1.2 インストールディスク・USBメディアの作成

  • Windowsユーザー: 「Rufus」や「balenaEtcher」などのツールを使ってISOイメージをUSBメモリへ書き込む。
  • Linux/macOSユーザー: dd コマンドを使う例。
  sudo dd if=AlmaLinux-9.0-x86_64-dvd.iso of=/dev/sdX bs=4M status=progress
  sync

ここで/dev/sdXはUSBメモリのデバイス名に置き換える。

2.1.3 UEFI/BIOSの設定

  • 起動優先順位で作成したインストールUSBメモリやDVDを最上位に設定。
  • UEFI Secure Boot: AlmaLinux 9はSecure Bootをサポートしているが、独自のカスタマイズを行っている場合はオフにするほうがトラブルを避けやすい。

2.2 インストーラー(Anaconda)の概要

2.2.1 Anacondaとは

Anacondaインストーラー
Red Hat系ディストリビューション(RHEL, CentOS, AlmaLinuxなど)で採用されている公式のインストーラーツール。GUIとテキストUIの両方が利用でき、インストール言語、キーボードレイアウト、パーティショニング設定などを一元的に行う。

インストーラーを起動すると、「インストール言語の選択画面」が表示されるため、日本語環境で利用したい場合は「Japanese」を選択し、キーボードレイアウトも確認する。

2.2.2 グラフィカルモードとテキストモード

  • グラフィカルモード: マウス操作が可能でわかりやすいインターフェース。推奨モード。
  • テキストモード: GUIが使用できない環境(最小構成やVGAの互換性問題など)で用いられる。
  # もしテキストモードで起動したい場合は
  linux text

のようにブートオプションを指定。


2.3 インストールの流れ(詳細)

2.3.1 インストール概要画面

起動画面で言語を選択した後、「インストール概要 (Installation Summary)」と呼ばれる画面に移行する。ここでは以下の要素を設定できる。

  1. 日付と時刻 (Date & Time)
  2. キーボードレイアウト (Keyboard)
  3. 言語サポート (Language Support)
  4. インストール先ディスク (Installation Destination)
  5. ネットワークとホスト名 (Network & Host Name)
  6. ソフトウェアの選択 (Software Selection)

ヒント: 各項目に「!」や「警告アイコン」がついている場合、設定が未完了のため先に進めない。警告が消えるように順番に設定を行う。

2.3.2 日付と時刻、キーボードレイアウト

日付と時刻 (Date & Time)

  • 画面上の地図やリストから居住地域を選択し、タイムゾーンを設定。
  • オンラインの場合はNTP(Network Time Protocol)サーバーと同期して自動更新される。

キーボードレイアウト

  • 日本語キーボードならJapaneseを追加し、必要に応じて英語キーボードEnglish (US)も併用。
  • 複数レイアウトを追加した場合、切り替えキー(例: Shift + Alt)なども確認。

2.3.3 インストール先ディスク (パーティショニング)

  • 自動パーティショニング: システムが推奨構成で/boot, /(root), swapなどを作成。初心者や単純構成におすすめ。
  • カスタムパーティショニング: /homeなどを分割したい場合は手動で設定。
  • LVMを使用: 将来的にディスク容量を拡張しやすい柔軟な構成。
  • 標準パーティション: シンプルだが、ディスク拡張には制限あり。
  • 暗号化 (LUKS): ディスク全体を暗号化し、起動時にパスフレーズが必要に。機密性が求められる環境に推奨。

パーティショニングのポイント

  1. /boot: 1GB程度(ext4など)。
  2. /(root): システム全体を格納するメインパーティション。
  3. /home: ユーザーデータを分けたい場合は独立。
  4. swap: RAMの1.0〜2.0倍程度(運用方針により変動)。
  5. LVM: pvcreate, vgcreate, lvcreateをAnacondaのGUI上から設定可能。

2.3.4 ネットワークとホスト名 (Network & Host Name)

  • ネットワークインターフェース一覧が表示される。自動(DHCP)か静的IPかを選択。
  • ホスト名: システムを識別する名前。server01.example.localのようにFQDN形式が望ましい。
  • IPv4/IPv6の設定やDNSサーバーの指定を行う際は、”Configure”ボタンから詳細設定が開ける。

2.3.5 ソフトウェアの選択 (Software Selection)

  • Minimal Install: 最小限のパッケージ構成。インストール後に必要なソフトを個別に追加したい場合に便利。
  • Server with GUI: サーバー用途だがGUIを使いたいケース。緊急時のトラブルシュートにGUIがあると便利という意見もある。
  • Workstation / Developer: 開発に必要なツール群が最初からまとめて導入される。

Base EnvironmentAdd-Ons を組み合わせてインストールする仕組み。例えば、Base Environmentを”Minimal Install”にして、”Add-Ons”で”Compatibility Libraries”を選ぶ、というような形が可能。


2.4 rootパスワードとユーザーアカウント作成

2.4.1 rootパスワード

  • 最上位権限を持つrootユーザーのパスワードを設定。
  • セキュリティ強度を高めるため、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた長めのパスワードが推奨。
  • “Weak password” と表示される場合、簡易パスワードを使用している可能性が高いので注意。

2.4.2 ユーザーアカウント

  • 名前、ユーザー名、パスワード、管理者(sudo権限)かどうかを指定。
  • AlmaLinux 9では、ユーザー作成時にホームディレクトリの暗号化や自動ログインといったオプションもある(GUIインストーラーの場合)。

ポイント
SSHでのリモート管理を行う予定なら、“Make this user administrator”にチェックを入れてsudo権限を付与することを忘れずに。


2.5 インストール開始と進捗表示

全項目の設定を終えると、「Begin Installation」が押せるようになる。インストール開始後は、ディスクフォーマットやパッケージの展開が行われる。

  • インストール完了まで数分〜数十分かかる。
  • 途中で「rootパスワードの設定」「ユーザーアカウント作成」がまだの場合は、ここで指示されることがある。

注意: インストール開始後に設定変更は原則不可。中断したい場合は一旦キャンセルし、再度設定し直す必要がある。


2.6 インストール完了後の初期ログイン

2.6.1 再起動と初期ログイン

インストールが完了すると、画面の指示に従いシステムを再起動。再起動後は、以下のようにログインする。

  • CLI環境の場合: ユーザー名とパスワードを求められる。rootまたは作成した一般ユーザーでログイン。
  • GUI環境の場合: GNOMEなどのデスクトップが表示され、グラフィカルログイン画面に進む。

2.6.2 Post-installation(初回セットアップ)

  1. システムアップデート
   sudo dnf update -y

最新のパッケージとセキュリティパッチを適用。

  1. ファイアウォールとSELinuxの確認
   sudo systemctl status firewalld
   sestatus
  1. ホスト名・ネットワーク設定の見直し
   hostnamectl set-hostname server01.example.local
   nmcli connection edit enp0s3   # など
  1. タイムゾーン・NTP確認
   timedatectl

2.7 (参考)Kickstartを用いた自動インストール

大規模な環境で多数のマシンを構築する場合、Kickstartファイルを使って自動インストールが行われることが多い。

# Kickstart例 (ks.cfg)
lang ja_JP.UTF-8
keyboard jp106
timezone Asia/Tokyo --isUtc
rootpw --plaintext myrootpass
auth --useshadow --passalgo=sha512
selinux --enforcing
firewall --enabled --service=ssh

# パーティション例
clearpart --all --initlabel
part /boot --fstype=ext4 --size=1024
part pv.01 --size=1 --grow
volgroup vg0 pv.01
logvol / --vgname=vg0 --name=lv_root --size=4096
...

%packages
@^Minimal Install
vim-enhanced
chrony
%end

使い方:
boot: linux ks=http://example.com/ks.cfg のようにカーネルブートオプションでKickstartファイルの場所を指定すると、自動的に設定に従ってインストールが進む。


2.8 学習のまとめ

  1. インストールメディアの選択: DVD ISO、Minimal ISO、Boot ISOの特徴を把握し、環境や用途に合わせて選択する。
  2. Anacondaインストーラーでは、言語・キーボード・日付時刻・パーティショニング・ネットワーク設定などを一括管理。自動パーティショニングかカスタムパーティションかをあらかじめ検討する。
  3. rootパスワードユーザーアカウントを適切に設定し、SSHでの管理を想定するならsudo権限を忘れず付与。
  4. インストール完了後は再起動し、システムのアップデート、ファイアウォール、SELinuxなどのセキュリティ設定を確認してから本格運用に移る。
  5. Kickstartなどの自動インストール手法を使うと、大規模環境や繰り返し構築が必要なケースでの作業効率が高まる。

次章へのつながり

次の章(第3章)では、AlmaLinux 9を操作する上で基本となるコマンドライン操作シェルの使い方を深掘りします。インストールが完了したばかりのシステムを自在に扱うために、コマンドの基礎知識やファイル操作、ユーザー管理の初歩などを学んでいきましょう。