プロンプトの基本公式:次は「Goal」に注目しよう
前回は「Role(役割)」をテーマに、AIに“何者”として振る舞ってもらうかを深堀りしました。今回は「Goal(目的/目標)」に焦点を当て、プロンプトでの指定方法や注意点を詳しく解説します。
そもそも「Goal」とは?
Goal(目的/目標)とは、「そのプロンプトを通じて何を実現したいのか、どんな結果を得たいのか」を明確にするための要素です。AIに対して「どのゴールに向かって回答してほしいのか」を明示することで、回答の方向性がブレにくくなります。
なぜGoalが重要なのか
- 問いかけの軸を定める
Goalが曖昧だと、AIが膨大な知識の中から「何を優先して答えればよいのか」を判断しにくくなります。結果、必要な情報を得るまでに回り道をしたり、答えが漠然としたものになりがちです。 - 回答の評価基準を定める
Goalがはっきりしていれば、得られた回答が「ゴールに近いかどうか」を判断しやすくなります。もし回答がゴールから外れていれば、修正をかけやすいのもメリットです。
Goalの設定で得られるメリット
AIへの指示が端的に伝わる
「自分の欲しい情報・目的は何か」を短いフレーズでまとめると、AIが回答しやすくなります。たとえば、「新しいサービスのアイデアを複数提案してほしい」「既存の資料を要約してほしい」など、ゴールが一言で言えるくらい明確だとベストです。
回答のリスクや無駄を減らせる
ゴールが定まっていないと、AIの回答が広範囲に及びすぎて必要以上にボリュームが増えたり、逆に重要な部分が抜け落ちたりします。明確なゴールがあれば、「そこに必要な情報」と「不要な情報」を判別しやすくなるため、無駄なやりとりが減ります。
再質問や追加要望がスムーズに
Goalが定まっているおかげで、もし回答が不十分でも「ここが足りない」「もう少し具体案が欲しい」など、追加要望を的確に出しやすくなります。プロンプトエンジニアリングにおいては、修正指示や再プロンプトも一部ですから、ゴールがあるとこのプロセスが効率化します。
Goal指定のコツ
端的に一文でまとめる
「最終的に何が欲しいか」をできるだけシンプルな文でまとめましょう。
- 例:「新商品を販売するためのマーケティング戦略を知りたい」
- 例:「プログラムの不具合を特定し、解決策を提示してほしい」
長い文章で多くの要素を盛り込みすぎるより、「最終的な着地点」を一文で言えることが理想です。
解決したい課題や疑問を具現化する
ゴールが明確になるほど、AIの回答が的確になります。曖昧な目的を “見える化” するためには、次のような問いかけが有効です。
- 「今直面している課題は何か?」
- 「課題を解決するために期待するアウトプットはどんなものか?」
- 「どんな使い道・活用方法を想定しているか?」
これらを言語化すると、自然と「何がゴールか」がはっきりしてきます。
複数のゴールを設定する場合は優先順位を
時には「Aの情報も欲しいし、Bの分析もしてほしい、Cの提案もほしい」など、欲張りになってしまうことがあります。この場合はゴールをいくつか並列で挙げても問題ありませんが、優先順位を明示しておくと回答がわかりやすくなります。
最優先Goal: 新しいマーケティング施策のアイデアを得る
第二Goal: 施策ごとのコスト試算
第三Goal: 実施スケジュールの大枠
このように記載すると、AIが回答を組み立てやすくなります。
Goalと他の要素との連動
Goalは、前回の「Role」に加え、Constraints(条件)やInput(入力)、Output Format(出力形式)とも密接に関わります。たとえば次のような例を考えてみましょう。
【Role】
あなたは経営コンサルタントです。
【Goal】
新規事業を立ち上げる際のリスクを整理し、可能な限り具体的な対策を知りたい。
【Constraints】
- 事業規模は年間売上1億円を目標
- メンバー数は10人以内
- 市場は国内のみ
【Input】
現在の製品やサービスの説明資料(要約をここに挿入)
【Output Format】
1. 想定リスク
2. リスクが生じる理由
3. 具体的対策
4. 必要なコスト・リソースの概算
- Roleで「経営コンサルタント」と指定しているので、経営視点のアドバイスが期待できる
- Goalで「リスクを整理し、具体策を知りたい」と明確にしているため、回答がリスク分析に集中しやすい
- Constraints(条件)やInput(背景資料)から、想定する規模感や事業ドメインを絞り込んでいる
- Output Formatで構造化を求めることで、回答を使いやすく整理できる
ゴールがはっきりすると、ConstraintsとInputをどう使うかもイメージしやすくなり、Output Formatをどんな形で設定すべきかも自然に明確になります。
Goalをうまく使うための注意点
- 欲しい情報が抽象的すぎないか
- 「参考になるアイデアが欲しい」など抽象度が高い場合は、トーンや方向性が定まりにくくなる。
- なるべく「どんな視点のアイデアが欲しいか」を補足するのがおすすめ。
- 無理のないスコープを設定する
- ゴールを盛り込みすぎると回答が散らばることも。「段階的に複数回のやりとりをする」方法も有効です。
- 途中でゴールが変わるなら再設定を
- 対話を続けているうちにゴールが変化するのはよくあること。途中で気づいた場合は「あらためて目指すゴールは◯◯です」と再設定しましょう。
まとめ
- Goal(目的/目標)は、AIに「何を達成してほしいか」を示す核となる要素。
- 明確なGoalがあると、AIは回答の方向性を定めやすく、回答の質が高まりやすい。
- Roleとの組み合わせで “どんな専門家として、どんな目的を達成するのか” を示すと、回答がさらに洗練される。
- もし回答が満足いかない場合でも、Goalが定まっていれば追加の質問や修正依頼が的確に行える。
次回は引き続き、Constraints(条件)やInput(入力)、Output Format(出力形式)など、他の要素の深堀りも行っていきます。「Goal」をうまく設定するだけで、AIとのコミュニケーションが格段にスムーズになりますので、ぜひ試してみてください。