プロンプトの基本公式詳説:「Role」

プロンプトの基本公式:まずは「Role」に注目しよう

今回は「プロンプトの基本公式」を構成する要素の中でも、とりわけ重要なRole(役割)に焦点を当てて深く掘り下げてみたいと思います。「Role」を工夫するだけでも、AIが返す回答の質や方向性が大きく変わります。ぜひ最後までお付き合いください。


そもそも「Role」とは何か?

大規模言語モデル(LLM)に対する指示文(プロンプト)を考える際、よく言われるのが「Role(役割)+ Goal(目的/目標)+ Constraints(条件)+ Input(入力)+ Output Format(出力形式)」という基本公式です。
その中でもRoleは、文字通り「このAIには何者として回答してほしいのか」を指定するパートです。たとえば「あなたは小説家です」「あなたは優秀なデータサイエンティストです」といった具合に、AIに対して専門性やキャラクターを付与します。

なぜ「Role」が必要なのか

AIは、膨大な文章データを学習しており、多種多様な文体や知識を内包しています。そのため、どの知識領域をベースにどのような口調で回答すればよいのかが曖昧だと、本来欲しい答えから外れた結果になりがちです。
「Role」を明示すると、AIは指定された専門知識や文体を優先的に反映させようとするため、回答内容のブレやトーンのブレが軽減され、より的確に目的へと近づくことができます。

Roleの設定で得られるメリット

回答の専門性が高まる

「あなたは心理学の専門家です」「あなたはデータサイエンティストです」のように役割を与えることで、AIは該当分野に焦点を当てた内容を返しやすくなります。実際に、同じ質問でもRoleを変えるだけで、回答に含まれる専門用語や視点が大きく変化します。

文体・語調をそろえられる

「FriendlyなAIアシスタントとして、やわらかい言葉で」と指定すれば、カジュアルで親しみやすい文体が返ってきやすくなります。一方で、「学術的な文献を参考に、フォーマルな論文調で」とすれば、専門用語をしっかり使った硬めの文章が返りやすいです。

“回答のキャラクター”を確立しやすい

回答の内容だけでなく、書き手としての個性を演出できます。「あなたは熟練の小説家です。読者を惹きつける表現で」といった指示を与えると、物語調のドラマチックな文章が期待できます。このように、必要とする文脈に合ったスタイルをAIに担わせることが可能です。

Role指定のコツ

明確な役割を一文で指定

最初に「あなたは〇〇です」と一文で指定するだけでも十分効果があります。例として、次のように書くと分かりやすいでしょう。

あなたは優秀な医療系データサイエンティストです。<br>

これによって、医療分野の知識やデータ分析の知識を組み合わせた視点で回答が返ってきやすくなります。

追加属性の付与

より複雑な指定が必要な場合には、追加情報を盛り込んでも構いません。

あなたは優秀なデータサイエンティストであり、マーケティング分野にも精通しています。<br>

このように書くことで、「データ分析」と「マーケティング」の両方に強い人物像を想定できます。多面的な視点が欲しいときに有効です。

キャラクター性を演出

必ずしも「専門職」だけがRoleではありません。「小説家風」「やさしい教師風」「ロボット口調」など、文体やキャラクターを強調する指示でもOKです。回答にユーモアや独特の味をつけたい場合に役立ちます。

あなたは未来から来たAI研究者で、30年以上先のテクノロジーに詳しい。<br>

このようなユニークな設定にすることで、架空のシナリオを自然に扱いやすくなります。

Roleと他の要素の連動

Roleは単独で機能するわけではなく、Goal(目的)や Constraints(条件)と組み合わさることで初めて真価を発揮します。たとえば、下記のように指定すると、全体の矛盾が少なくなります。

【Role】<br>あなたはBtoB向けソフトウェア販売の経験が豊富な営業コンサルタントです。<br><br>【Goal】<br>新製品の営業戦略を確立し、顧客獲得を効率化したい。<br><br>【Constraints】<br>- 予算は年間500万円以内<br>- チームは5名以下<br>- 競合はクラウド系サービスを扱うスタートアップ<br><br>【Output Format】<br>1. 現状の分析<br>2. 改善策<br>3. 期待される効果<br>
  • Role:営業コンサルタント
  • Goal:営業戦略の確立
  • Constraints:予算やチーム構成、競合情報
  • Output Format:解答の章立て

ここで「営業コンサルタント」としての知見を活かしつつ、提示された予算や競合状況を踏まえたアドバイスが期待できます。

Roleをうまく使うための注意点

  1. 過度な欲張りは避ける
    • 役割をあれもこれも詰め込みすぎると、AIの回答が散漫になる場合があります。
    • コアとなる専門分野に絞りつつ、一部を補足的に書くほうがスムーズです。
  2. 文脈と矛盾しないようにする
    • 例えば「あなたはカジュアルでフランクに話す国語教師です」と「ですが専門的な学術論文を引用し、高度な学問的考察を行ってください」という組み合わせは矛盾が生じます。矛盾があると回答が混乱する可能性があります。
    • “フランクな国語教師が学術的観点も交えながら…”など、整合性を意識した表現を心掛けましょう。
  3. 続けて質問を行う際は、Roleを継続するか再指定するか決める
    • AIチャットの文脈が途切れていない場合、「Role」を改めて指定しなくてもいいこともあります。
    • ただし、しばらく質問が途切れた後や、新しい話題に切り替わる際は明示的に指定したほうが確実です。

まとめ

  • Role(役割)の指定は、AIにどのような専門家や人物像として回答してほしいかを明確化するための要素。
  • 適切に指定することで、回答の方向性や文体・専門性がそろいやすくなるため、ほかの要素(Goal、Constraints、Input、Output Format)をいくら充実させても、Roleが曖昧では欲しい答えがブレる可能性があります。
  • まずはシンプルに「あなたは◯◯です」と書くだけでも効果があるので、ぜひ試してみてください。

次回は、Role以外の要素についても順番に掘り下げていきたいと思います。まずは「Role」を意識するだけで、驚くほど回答に変化が出るはずです。ぜひ、あなたもRoleの指定を工夫してみてはいかがでしょうか。

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