プロンプトの基本公式:今回は「Constraints」に注目しよう
前回までに「Role(役割)」と「Goal(目的/目標)」を深掘りしてきましたが、今回はその次の要素である「Constraints(条件)」に焦点を当てて解説します。
「Constraints」とは、その名のとおり “回答に制約をつけること” であり、AIにどのような範囲・スタイル・形式で回答してほしいかを指定する重要な要素です。
Constraints(条件)とは
Constraints(条件)は、大きく分けて次の3種類に整理できます。
- 文章・情報量に関する制約
- 文字数、行数、段落数など
- 例:「200文字以内でまとめてください」「3つのステップに分けて説明してください」
- 文体・スタイルに関する制約
- 使用言語、文体(フォーマル/カジュアル/専門用語の多用など)、口調
- 例:「敬体(です・ます調)で書いてください」「ジョークを交えたフランクな文体にしてください」
- 情報の質・内容に関する制約
- 取り扱うデータの範囲や内容の細かい指定、禁止事項など
- 例:「政治的な発言や差別的表現は含まないでください」「データ分析には公開情報のみ用いてください」
これらの制約をしっかりと設定することで、AIからより正確かつ扱いやすい形の出力が得られます。
Constraintsがなぜ重要なのか
回答のブレを防ぐ
AIは膨大な情報を生成できますが、制約なしに要求すると回答が長くなりすぎたり、話題が逸れてしまうリスクがあります。Constraintsを設けることで、回答の範囲や形式を絞り込み、ブレを最小化できます。
使いやすさが向上する
「出力を箇条書きにしてほしい」「概要と詳細を分けてほしい」などの指定をすると、後で回答を参照・加工しやすくなるというメリットがあります。特に複数人で共有する場合や、他のツールに貼り付ける場合などは、指定されたフォーマットがあると便利です。
読み手・活用シーンに合わせられる
たとえば「10歳の子でもわかる言葉で」と書くだけで、回答の専門用語や文体がぐっとやさしくなります。一方で、「学術論文のように厳密な表現で」と指定すれば、高度な語彙や論理展開をAIが意識するようになります。誰がどう読むかを明示できるのがConstraintsの強みです。
Constraints指定のコツ
優先順位を明確にする
Constraintsを複数設ける場合、それらが相反する状況が起きないように気をつけましょう。もし「短くまとめたい(100文字以内)」と「詳細に解説してほしい(専門用語も含む)」を同時に求めると、AIが混乱するか、どちらかが犠牲になる可能性があります。
- 例:
- 最優先:箇条書きで10項目、1項目50文字以内
- 次に優先:専門用語も活用しつつ正確に
- 可能なら:具体例を入れる
こうして優先度をつければ、重要な条件を満たしつつ、二次的な条件は無理のない範囲で取り入れられます。
具体性をもたせる
曖昧な表現のConstraintsよりも、数値・フォーマット・具体例を含めたほうがAIは解釈しやすくなります。たとえば「短くお願いします」ではなく、「3つの短い段落に分けて説明し、1段落50文字以内に収めてください」と書けば、長さの目安がはっきりします。
禁止事項・除外事項を明確に
特定の話題に触れないでほしい、あるいは特定の情報ソースを使わないでほしいなどの制約がある場合、はっきり書くのがポイントです。
- 例:「個人名や機密情報を含めないでください」「××に関する言及は避けてください」
- これによって、AIがその範囲外の情報を生成することを抑制できます。
Constraintsと他の要素との連動
Constraintsは、前回までの Role(役割)・Goal(目的/目標)と合わせて使うことで、さらに効果的になります。また、後述する Input(入力)やOutput Format(出力形式)とも深く関わります。
Roleとの組み合わせ
- Role: 「あなたは医学分野の専門家です」
- Constraints: 「専門用語は解説付きで使い、一般的な表現も交えてください」
こうすることで、医学専門家らしい回答が期待できつつ、一般の人にもわかりやすい形に制御できます。
Goalとの組み合わせ
- Goal: 「新しいマーケティング施策を提案してほしい」
- Constraints: 「予算は月20万円以内」「チームは3名で運用可能」「3つの施策に絞る」
Goalが「施策提案」であることに加え、「20万円以内」などのConstraintsを示すと、AIは “予算や人員制限を考慮した提案” を出しやすくなり、現実的なアイデアが得られます。
InputやOutput Formatとの相性
- Input(入力)で大量の文章やデータをAIに渡す場合、Constraintsで要約や分析の仕方を指定する
- Output Format(出力形式)とConstraintsはとても相性がいい
- 例:「以下のフォーマットで、1項目あたり80文字以内で回答してください」
- こう書くと、AIが文字数を意識しながら特定の形式に出力しやすくなります。
Constraintsをうまく使うための注意点
- 過度に細かくしすぎない
- Constraintsをたくさん盛り込みすぎると、AIの自由度が下がりすぎて回答しづらくなる場合があります。
- 基本的には目的達成に必須の条件に絞り、優先度の高いものだけを指定するのがおすすめです。
- 矛盾を避ける
- 「短くまとめて」と「詳しく書いて」が同居すると回答が曖昧になりがち。
- もし両立させたいなら、「最初に短い要約を書いてから、詳細を後ろにつける」のように具体的な指示を与えるとよいでしょう。
- 状況に応じて更新する
- 初回のConstraintsで十分でない場合は、追加質問や修正で再指定すればOK。
- プロンプトエンジニアリングは反復でブラッシュアップしていくプロセスでもあります。
まとめ
- Constraints(条件)は、AIに対して「どのような形式や範囲で回答してほしいか」を示す重要なパラメータ。
- 文章量や文体、禁止事項などを具体的に指定し、回答のブレを防ぎ、活用しやすい形に仕上げられる。
- Role(役割)、Goal(目的)と組み合わせることで、より「現実的で、目的に沿った回答」を得やすくなる。
- Constraintsを設定する際は、具体性・優先順位・矛盾排除に気を配るとスムーズに活用できる。
次回は、Input(入力)や Output Format(出力形式)に焦点を当て、プロンプト全体を最適化するためのポイントを解説します。