WindowsServer 2025 総合ガイド 第1回
Windows Server 2025とは? ― サーバーOSの役割と学習環境の準備
本シリーズでは、Windows Server初学者を対象に、Windows Server 2025を使ったサーバー構築・運用の基礎から応用までを解説します。第1回となる今回は、サーバーOSの基本概念を理解し、学習環境を構築してリモートデスクトップ接続できる状態を目指します。
1.1 この記事で学ぶこと
- サーバーOSとクライアントOSの違いを理解する
- Windows Server 2025の特徴を把握する
- 学習環境(ConoHa VPS)を構築し、初回ログインができる
1.2 サーバーOSとは何か
1.2.1 クライアントOSとの違い
普段使用しているWindows 11やWindows 10は「クライアントOS」と呼ばれます。これに対し、Windows Serverは「サーバーOS」として設計されています。両者の違いを整理しましょう。
| 項目 | クライアントOS(Windows 11) | サーバーOS(Windows Server 2025) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 個人の作業・エンターテイメント | サービスの提供・複数ユーザーへの対応 |
| 稼働時間 | 必要なときに起動 | 24時間365日の連続稼働が前提 |
| 同時接続 | 原則1ユーザー | 複数ユーザーの同時接続に対応 |
| ハードウェア対応 | 一般的なPCスペック | 大容量メモリ・多数CPUに対応 |
| 機能 | 個人向け機能が充実 | サーバー機能(役割)が充実 |
サーバーOSは「サービスを提供する側」のOSです。Webサイトを表示する、ファイルを共有する、ユーザー認証を行うなど、複数のクライアントに対してサービスを提供することを目的としています。
1.2.2 サーバーの役割と用途
Windows Serverは、インストール後に「役割」を追加することで、さまざまなサービスを提供できます。代表的な役割を紹介します。
ファイルサーバー
組織内でファイルを共有するためのサーバーです。複数のユーザーが同じファイルにアクセスでき、アクセス権を設定することで「誰が」「どのファイルを」「読み書きできるか」を制御できます。
Webサーバー
Webサイトやアプリケーションをホストするサーバーです。Windows ServerではIIS(Internet Information Services)という機能を使ってWebサーバーを構築します。ブラウザからアクセスすると、HTMLや画像などのコンテンツを配信します。
認証サーバー(Active Directory)
組織内のユーザーアカウントやコンピューターを一元管理するサーバーです。Active Directoryドメインサービス(AD DS)を使うと、1つのアカウントで複数のサーバーやPCにログインできる「シングルサインオン」環境を構築できます。企業のIT基盤として広く利用されています。
データベースサーバー
業務データを管理するサーバーです。SQL Serverなどのデータベースソフトウェアと組み合わせて、大量のデータを安全に保存・検索できる環境を提供します。
1.2.3 24時間365日稼働という特性
サーバーの重要な特性として「止まらないこと」が挙げられます。クライアントPCは作業が終われば電源を切っても問題ありませんが、サーバーが停止すると、そのサービスを利用しているすべてのユーザーに影響が出ます。
この特性から、サーバー管理では以下の点が重要になります。
- 安定性:予期しない停止を防ぐための設計と運用
- 計画的なメンテナンス:更新プログラムの適用や再起動のタイミング調整
- 監視:問題の早期発見と対処
- 冗長化:障害時にサービスを継続するための仕組み
本シリーズでは、こうしたサーバー運用の基礎を段階的に学んでいきます。
1.3 Windows Server 2025の概要
1.3.1 エディションの違い
Windows Server 2025には、主に2つのエディションがあります。
| エディション | 特徴 | 想定用途 |
|---|---|---|
| Standard Edition | 基本的なサーバー機能を提供。仮想化は2台まで | 中小規模環境、物理サーバー中心 |
| Datacenter Edition | 全機能を提供。仮想化は無制限 | 大規模環境、仮想化基盤、クラウド連携 |
本シリーズでは、VPSサービスで提供されるDatacenter Editionを使用します。VPSでは通常Datacenter Editionが提供されるため、すべての機能を学習できます。
1.3.2 インストールオプション
Windows Serverには2つのインストールオプションがあります。
Desktop Experience(デスクトップエクスペリエンス)
GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を含むインストールオプションです。Windows 11のようなデスクトップ画面があり、マウス操作でサーバーを管理できます。初学者にはこちらがおすすめです。
Server Core(サーバーコア)
GUIを含まない最小構成のインストールオプションです。コマンドラインでの操作が基本となります。ディスク使用量が少なく、攻撃対象となる範囲(アタックサーフェス)が小さいためセキュリティ面で優れています。運用に慣れた環境で採用されます。
本シリーズではDesktop Experienceを使用します。GUIがあることで、設定内容を視覚的に確認しながら学習を進められます。
1.3.3 Windows Server 2025の主要な新機能
Windows Server 2025は2024年11月に一般提供(GA)が開始されました。主な新機能を紹介します。
セキュリティの強化
- Credential Guardの既定有効化:資格情報(パスワードなど)を保護する機能が、要件を満たすデバイスで既定で有効になりました
- Active Directoryの機能強化:新しい機能レベルの追加、データベースページサイズの拡張(8KBから32KBへ)によるパフォーマンス向上
管理性の向上
- OpenSSHの既定インストール:SSH接続に必要なコンポーネントが標準でインストールされ、リモート管理がより簡単になりました
- Windows Admin Centerとの連携強化:Webブラウザベースの管理ツールとの統合が進みました
- wingetの搭載:Desktop Experienceでは、パッケージマネージャー「winget」が標準搭載され、ソフトウェアのインストールが容易になりました
その他の改善
- Windows 11スタイルのUI:タスクマネージャーなどがWindows 11と同様のデザインに更新されました
- ワイヤレスLAN/Bluetooth対応:物理サーバーでのワイヤレス機能が簡単に有効化できるようになりました
1.3.4 サポートライフサイクル
Windows Serverは「固定ライフサイクルポリシー」に従い、長期間のサポートが提供されます。
| 項目 | 日付 |
|---|---|
| リリース日 | 2024年11月1日 |
| メインストリームサポート終了 | 2029年11月13日 |
| 延長サポート終了 | 2034年11月14日 |
延長サポート終了まで約10年間のサポートが提供されます。この期間中はセキュリティ更新プログラムが提供されるため、安心して運用できます。
1.4 学習環境の準備
1.4.1 VPS環境の選択肢と比較
Windows Server 2025を学習するには、実際に操作できる環境が必要です。環境構築の選択肢を紹介します。
VPS(仮想専用サーバー)を利用する方法
クラウド上のサーバーを借りる方法です。初期費用が不要で、すぐに始められます。本シリーズではこの方法を採用します。
メリット:
- 初期費用が不要
- 数分で環境構築が完了
- 自宅PCのスペックに依存しない
- インターネット環境があればどこからでもアクセス可能
デメリット:
- 利用期間中は月額費用が発生
- インターネット接続が必須
ローカル仮想環境を利用する方法(参考)
自宅PCにHyper-VやVirtualBoxなどの仮想化ソフトウェアをインストールし、その上でWindows Serverを動かす方法です。
メリット:
- 一度環境を構築すれば追加費用不要
- オフラインでも学習可能
デメリット:
- PCに十分なスペック(メモリ8GB以上推奨)が必要
- 環境構築に時間がかかる
- Windows Server評価版の利用期限(180日間)がある
1.4.2 ConoHa for Windows Serverの契約手順
本シリーズでは、GMOインターネットグループが提供する「ConoHa for Windows Server」を使用します。初期費用無料、最低利用期間なし、時間課金対応で、学習用途に適しています。
推奨プラン
| 項目 | スペック |
|---|---|
| プラン名 | WIN2GB |
| メモリ | 2GB |
| vCPU | 3コア |
| ストレージ | SSD 100GB |
| 月額料金(通常) | 2,783円(税込) |
| 時間料金 | 5.6円/時間 |
補足:料金は2026年1月時点の情報です。長期契約(まとめトク)を利用すると割引が適用されます。最新の料金は公式サイトでご確認ください。
アカウント作成
- ConoHa公式サイト(上記バナー)にアクセスします
- 「今すぐクーポンをもらう」または「お申し込み」ボタンをクリックします
- 「初めてご利用の方」を選択し、メールアドレスとパスワードを入力します
- 登録したメールアドレスに届く認証メールのリンクをクリックします
- 氏名、住所、電話番号などの基本情報を入力します
- 電話認証またはSMS認証を行います
- 支払い方法(クレジットカード、ConoHaチャージなど)を登録します
サーバーの作成
- ConoHaコントロールパネルにログインします
- 左メニューから「サーバー追加」をクリックします
- 「Windows Server」を選択します
- 以下の設定を行います:
- サービス:VPS(または VPS 3.0)
- イメージタイプ:OS
- OS:Windows Server 2025 Datacenter Edition
- 料金タイプ:時間課金(学習中のみ利用する場合)または まとめトク(継続利用する場合)
- プラン:WIN2GB
- rootパスワード(Administrator用パスワード)を設定します
- 「追加」ボタンをクリックします
重要:Windows Server 2025 Datacenter Editionは、VPS 3.0プランで提供されています。古いVPSプランでは選択できない場合がありますのでご注意ください。
初期パスワードの設定について
サーバー作成時に設定するパスワードは、Administratorアカウント(管理者アカウント)のパスワードになります。以下の点に注意してください。
- 複雑なパスワードを設定する:大文字、小文字、数字、記号を組み合わせた12文字以上を推奨
- パスワードを安全に保管する:紛失するとサーバーにログインできなくなります
- 他のサービスと同じパスワードを使い回さない
サーバーの作成には数分かかります。ステータスが「起動中」になれば準備完了です。
1.5 リモートデスクトップ接続
1.5.1 RDP(Remote Desktop Protocol)とは
RDP(Remote Desktop Protocol)は、Microsoftが開発したリモート接続プロトコルです。ネットワーク経由で別のコンピューターのデスクトップ画面を操作できます。
VPSで作成したWindows Serverは、データセンターにある物理サーバー上で動作しています。RDPを使うことで、手元のPCからそのサーバーを操作できます。
1.5.2 接続クライアントの準備
Windowsの場合
Windowsには「リモートデスクトップ接続」が標準搭載されています。追加のインストールは不要です。
起動方法:
- スタートメニューを開きます
- 「リモートデスクトップ接続」と入力して検索します
- 表示されたアプリをクリックして起動します
または、Win + Rキーを押して「ファイル名を指定して実行」を開き、mstscと入力してEnterキーを押しても起動できます。
macOSの場合
macOSでは「Microsoft Remote Desktop」アプリを使用します。
- App Storeを開きます
- 「Microsoft Remote Desktop」を検索します
- インストールボタンをクリックしてインストールします
1.5.3 接続手順と初回ログイン
接続に必要な情報の確認
ConoHaコントロールパネルで、作成したサーバーの情報を確認します。
- コントロールパネルの「サーバー」メニューをクリックします
- 作成したサーバーのネームタグをクリックします
- 「ネットワーク情報」タブでIPアドレスを確認します
接続に必要な情報:
- IPアドレス:サーバーの住所(例:xxx.xxx.xxx.xxx)
- ユーザー名:Administrator
- パスワード:サーバー作成時に設定したパスワード
Windowsからの接続手順
- 「リモートデスクトップ接続」を起動します
- 「コンピューター」欄にIPアドレスを入力します
- 「接続」ボタンをクリックします
- 証明書の警告が表示されたら「はい」をクリックします(初回接続時のみ)
- ユーザー名に「Administrator」、パスワードにサーバー作成時のパスワードを入力します
- 「OK」をクリックします
macOSからの接続手順
- 「Microsoft Remote Desktop」を起動します
- 「Add PC」または「+」ボタンをクリックします
- 「PC name」にIPアドレスを入力します
- 「User account」で「Add User Account」を選択し、ユーザー名とパスワードを入力します
- 「Add」をクリックして接続設定を保存します
- 保存した接続をダブルクリックして接続します
接続できない場合の確認ポイント
接続できない場合は、以下を確認してください。
| 症状 | 確認ポイント |
|---|---|
| 接続がタイムアウトする | IPアドレスが正しいか確認。サーバーが起動中か確認 |
| ログインできない | ユーザー名(Administrator)とパスワードが正しいか確認 |
| 証明書エラー | 自己署名証明書のため警告が出ます。信頼して続行してください |
1.5.4 画面構成の確認(サーバーマネージャー)
初回ログイン後、自動的に「サーバーマネージャー」が起動します。サーバーマネージャーは、Windows Serverの管理を行う中心的なツールです。
サーバーマネージャーの主な画面
- ダッシュボード:サーバーの状態を一覧表示。警告やエラーがあれば表示されます
- ローカルサーバー:現在のサーバーの基本設定を確認・変更できます
- すべてのサーバー:管理対象のサーバー一覧(今は1台のみ)
- 役割と機能の追加:Webサーバーなどの機能を追加するウィザード
サーバーマネージャーは今後の学習でも頻繁に使用します。まずは画面構成に慣れておきましょう。
1.6 最初の確認作業
サーバーに接続できたら、基本的な情報を確認しましょう。ここではPowerShellを使った確認方法を紹介します。
1.6.1 PowerShellの起動
Windows Server 2025には、Windows PowerShell 5.1が標準搭載されています。本シリーズでは後ほどPowerShell 7.4をインストールしますが、まずは標準搭載のPowerShellで基本的な確認を行います。
PowerShellの起動方法:
- タスクバーの検索アイコンをクリックします
- 「PowerShell」と入力します
- 「Windows PowerShell」を右クリックし、「管理者として実行」を選択します
補足:サーバー管理では、多くの操作に管理者権限が必要です。PowerShellは「管理者として実行」する習慣をつけましょう。
1.6.2 システム情報の確認
サーバーの基本情報を確認します。
[実行環境: Windows PowerShell 5.1 (管理者)]
# OS情報の確認
Get-ComputerInfo | Select-Object WindowsProductName, OsVersion, OsArchitecture
実行結果の例:
WindowsProductName OsVersion OsArchitecture
------------------ --------- --------------
Windows Server 2025 Datacenter Evaluation 10.0.26100 64-bit
コンピューター名とドメイン参加状態を確認します。
# コンピューター名の確認
$env:COMPUTERNAME
# ドメイン参加状態の確認
(Get-CimInstance -ClassName Win32_ComputerSystem).PartOfDomain
1.6.3 ネットワーク接続の確認
IPアドレスとネットワーク接続状態を確認します。
[実行環境: Windows PowerShell 5.1 (管理者)]
# IPアドレス設定の確認
Get-NetIPConfiguration
実行結果の例:
InterfaceAlias : Ethernet
InterfaceIndex : 3
InterfaceDescription : Microsoft Hyper-V Network Adapter
IPv4Address : xxx.xxx.xxx.xxx
IPv4DefaultGateway : xxx.xxx.xxx.1
DNSServer : xxx.xxx.xxx.xxx
インターネット接続を確認します。
# インターネット接続テスト
Test-Connection -ComputerName www.google.com -Count 2
「Reply from …」と表示されれば、インターネット接続は正常です。
1.6.4 Windows Updateの状態確認
サーバーのセキュリティを維持するため、Windows Updateの状態を確認します。
[実行環境: Windows PowerShell 5.1 (管理者)]
# 最終更新日時の確認
$Session = New-Object -ComObject Microsoft.Update.Session
$Searcher = $Session.CreateUpdateSearcher()
$History = $Searcher.QueryHistory(0, 1)
if ($History.Count -gt 0) {
$History | Select-Object Date, Title | Format-List
} else {
Write-Host "更新履歴が見つかりません"
}
また、サーバーマネージャーのダッシュボードでも、Windows Updateの状態を視覚的に確認できます。左メニューの「ローカルサーバー」をクリックし、「Windows Update」の項目を確認してください。
1.7 まとめ
第1回では、以下の内容を学びました。
- サーバーOSとクライアントOSの違い:サーバーOSは「サービスを提供する側」のOSであり、24時間365日の安定稼働が求められる
- Windows Server 2025の特徴:Standard EditionとDatacenter Editionの2つのエディションがあり、Desktop ExperienceとServer Coreの2つのインストールオプションがある。2034年11月14日まで約10年間のサポートが提供される
- 学習環境の構築:ConoHa for Windows ServerでVPS環境を構築し、WIN2GBプランでWindows Server 2025 Datacenter Editionを利用開始
- リモートデスクトップ接続:RDPを使ってVPS上のサーバーに接続し、サーバーマネージャーの画面を確認
- 基本情報の確認:PowerShellを使ってシステム情報、ネットワーク設定、Windows Updateの状態を確認
これで、Windows Server 2025の学習環境が整いました。今後の学習では、この環境を使ってサーバー管理の基本スキルを身につけていきます。
1.8 次回予告
第2回では「PowerShell 7.4 入門 ― モダンなサーバー管理の第一歩」と題して、PowerShell 7.4のインストールと基本操作を学びます。なぜPowerShellを学ぶのか、コマンドレットの命名規則、パイプラインの概念など、サーバー管理の基礎となるスキルを習得します。
